セレブとテック投資の関係ーーライアン・レイノルズに見る成功例

セレブとテック投資の関係

 セレブリティと商品プロデュースは、物理的な商品としてプロモーション戦略が練りやすいことや、目に見えての売り上げがあることなどから、多くのセレブが様々なコラボや商品開発などに関わってきた。代表的な例としては1990年代にラッパーとして成功したDr Dre.のプロデュースヘッドフォンBeatsが挙げられる。2006年に設立されたBeatsは現在、ヘッドフォン業界の競争が激化する中でも高級ヘッドフォン市場(USD$100以上)の半分のシェアを占めている。

セレブとコラボレーション

 近年のテクノロジーブームなどから多くのセレブたちがテック投資に参入してきたのはわからなくもないが、化粧品やその他一つの主な用途のある商品広告などとはアプローチが違うことから、必ずしも大きな成功につながるとは限らない。

 実際、一つのデバイスの価格帯が高いことや、商品の魅力をプロモートするのにあまりにも様々な用途や側面があることから、高額を投じてセレブを広告やコラボに起用しても、それに応じた大幅な収益の増加に繋がらないのが現状だ。ハリウッド俳優としてラブコメブームで成功を収めたアシュトン・カッチャーを起用したLenovoのYoga Tablet 2 Pro、レディーガガをクリエイティブディレクターに迎えたポラロイド、アリシア・キーズとタッグを組んだBlackBerryといった施策は、どれも不発に終わっている。

フィジカルからオンラインへ

 物理的な商品デバイスから時代がオンライン商品開発に進む中、セレブたちもそれぞれの分野でテック業界への参入を試みたが、ここでも不発に終わったものが多い。

 若者たちに大人気のアーティスト、ジャスティン・ビーバーのセルフィーアプリShotsへの投資やJay-Zの音楽ストリーミング開発など、従来のコラボレーションだけでは成功は保証できないトレンドがある。

 一方、若い世代におけるYouTubeやTikTok、Instagramの普及で、新しいセレブたちが生まれている。自分で作成した動画やオンラインコンテンツで成功する“オンラインセレブ”の台頭は今までのセレブたちの枠には嵌らず、顧客たちに近い距離にある個人を起用することにより、いっそうパーソナルで幅広いプロモーションを可能にしている。

ライアン・レイノルズとミントモバイル

 そんななか、セレブテック投資家として成功を収めているのが、マーベル映画『デッドプール』主演俳優として注目を集めたカナダ出身のライアン・レイノルズだ。彼は昨年末、アメリカベースのプリペイドモバイルサービスMint Mobileに多額の投資をし、現在会社の25%以上の株を保有している。Mint MobileはMVNO(仮想移動体通信事業者)と呼ばれる、自分たちの通信開発をせずにすでに設備された通信回線を借りて営業する通信サービスだ。日本では格安スマホや格安SIMなどを提供するLINEモバイル、楽天モバイルやUQモバイルなどが挙げられる。2016年にカルフォルニアベースのモバイル通信会社Ultra Mobile傘下に設立されたMint Mobileは、4年の間に50,000%のペースで収益を伸ばした急成長中ベンチャー企業だ。レイノルズは自身の投資をただの資本主義的なアプローチからだけではなく「分断される世の中で人をつなげていける機会や場所に力を注いでいきたい」と話していることから、彼自身の信念などに近いところからの投資とも見られる。

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