早大が提示する新たな授業システム「反転授業」とは? 希望と懸念の狭間の1年生が解説
関連して、秋学期の大学側の情報提供の過程で不親切だなと思ったのは、“どの授業が対面で、どの授業がオンラインなのか”を、科目登録の際に事前に示してくれなかった点である。唯一、文学研究科だけが具体的な割合を提示していたので参考にすると、講義はすべての授業をオンラインで実施、3年演習と卒論演習は、クラスにより月1回程度の対面授業あり、心理学・美術史・考古学コースのいくつかの科目は対面で行われているようだ。語学の授業やオープン科目なども全面オンラインである。つまり、今年の早稲田の1年生は、何か特別な科目を取らない限り、後期も全面オンライン授業だろう。このままでは、来年度入学する学生も全面オンラインを経験することになるかもしれない、と思うのも自然である。
筆者が履修した科目の授業では見受けられなかったが、知人に話を聞くと「リアクションペーパーの存在意義」を問う声が多かったのも印象的だ。通称「リアぺ」と呼ばれるこのオンライン課題は、毎授業ごとに“感想”や“今回の講義で得た知識”などを長文で書いて提出するというもので、これが非常に時間を食うので滅入ってしまうらしい。あまり関心を持てない講義でも、何かを学びとろうという姿勢が求められる取り組みで、メリットはある。しかし、正直に言って、教授の講義に毎度毎度「感動した」り「驚いた」り「考えさせられた」りできるとは限らないため、適当な文句を考えるのが早くなるという、よくない技術を発達させてしまっているというデメリットもある。『反転授業』の開始に即してこの「リアぺ」が討論や発表に取って代わることを願う。
そして、矛先を変えれば、『反転授業』の対面講義は、「リアぺの対面発表会」になってしまっては意味がない。前期でオンライン授業を受けてみて、オンライン化への適応力は教授によってバラつきがあった。したがって、全ての教授が来学期までに、『反転授業』に合わせて、討論や発表をスムーズに授業に取り入れるのも難しいのではないだろうか。なぜ、顔を合わせる必要があるのかを常に忘れずに、今後の対応を提示してもらえると、安心できてありがたい。
オンライン化による全体的なクオリティの低下を問題視する声は根強い。筆者も、その点については同意している(なかには90分授業なのに20分の講義動画しかアップしない教授もいるのだ)。しかし、上述のようにメリットと思える部分もあり、各授業や教授がオンラインに適しているのか、それとも対面に適しているのかということを見極めて対応していくことも、とても重要であるように思う。その場合は、オンラインにしろ、対面にしろ、「授業を受ける側」の姿勢も重要になりそうだ。教授と学生、そして大学(と政府)のそれぞれが、このコロナ禍における勉学のクオリティを保つために、努力する姿勢を見せなければならないのではないだろうか。
なお、学費については引き続き大学側に、全面的に異議を呈していきたい。入ったこともない大学施設の設備費を満額徴収されるのには、いくら説明されても納得がいかないことを、ここに書き添えておく。
(画像はPixabayより)
※初出時、「ハイブリッド授業」及び「反転授業」の認識に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。