新型コロナの封じ込めに失敗し、子どもの学業が犠牲に…… 休学が格差に与える影響を考える

新型コロナと休学が生む格差を考える

 新型コロナウィルスの恐怖も徐々に下火になり、ニューノーマルがノーマルになりつつある日本。しかし、新型コロナが完全に収束しておらず、ワクチンも完成していない。これから気温が低くなっていくので第三波の訪れもささやかれています。再び休校になり、オンラインクラスが始まる可能性も多分に考えられるでしょう。

 アメリカでは年内ずっとオンライン授業の学校と、週の内数日だけ登校する学校と、既にクラスでの授業をフルで再開している学校があるそうですが、そのすべてがベストな方法とは言えずそれぞれにリスクが伴います。

 『The Verge』は、混乱した教育現場が子どもたちにどのような影響を与えるのか、そして休学がチャイルド・プア(子供の貧困の意:NHKの報道番組ディレクターの新井直之氏による造語)と格差にどう影響してくるのかを専門家と話をしたそうです。私たちが参考にできることはあるのでしょうか。

園生活は人生の基盤を作る

 幼稚園や保育園に通うことで、子どもたちはグループ内でどのように振る舞うのか、他の子どもとどう接するのかを学び、社会性や認知能力を身につけ、先生や家族以外の大人と信頼関係を築きます。ノートルダム大学の経済学部で教育方針を学んだChloe Gibbs氏は、登園できなければ社会的、また情緒的な成長が遅れてしまうと警告を鳴らしています。

 園では社会性を学ぶ他に、文字を習ったり、本を読み聞かせてもらったり、歌を練習したりします。そういった内容の一部は家庭でも再現可能ですが、再現できる親は、時間に余裕がある人たちで、子どもが入園するより前から日常的に教えている場合がほとんど。

 両親が多忙な場合、子どもと時間を共にすることも、教育に必要な本を手に入れることもできず、一連の教育を園に任せていることが多いとのこと。登園できない期間が長ければ、教育に熱心な家庭の子供と、園でしか学びに触れられない子供との間に、差が広がってしまうことは容易に想像できるでしょう。

 では、どうすれば良いのでしょうか。幼児教育はオンライン授業では伝えられない部分が多すぎるため、早々に園を開くべく対策が講じられるべきでしょう。それまでの間は、学習強化につなげるために、オンライン上での先生との信頼関係構築に力をいれるのが望ましいようです。

小学校では識字能力の発達を

 小学校になると、まず1年生で読む力を養い、2年生からは培った読む力を使って他の教科を学ぶようになります。『The Verge』によると、この読む力は非常に重要で、ERICの調査によると3年生の終わりまでに文章を流暢に読めなければ、高校卒業前に中退する確率は4倍も高いことがわかっているそうです。

 このため、本来であれば夏休み明けの学力ロス、いわゆる「サマースライド」を防ぐために、有色人種や低所得層の学生に図書館の本を何冊も持ち帰らせる取り組みをしているそうですが、今年は新型コロナウィルス感染蔓延で図書館が閉鎖されたため、本が貸し出されなかった可能性があるとのこと。

 直接本を借りられなければ、オンラインで図書館の内容にアクセスするという手もありますが、貧困家庭の中にはインターネットすら開通していないこともあるそうです。

 今年はすでに3月、4月が休校になっています。長い夏休みに加えて、追い討ちをかけるように秋学期までオンラインスクールになると、3年生、4年生、5年生は読解力と数学力を通常よりも低下させる可能性があると、非営利の教育研究団体NWEA(旧Northwest Evaluation Association)は考えているようです。

 ただ、子供たちをCOVID-19から守るためにはオンラインクラスはやむなし。では、小学生の学力を維持するために、どういった対策が取れるのしょうか? 前出のChloe Gibbs氏は、1年生や2年生は、専門のコーチとペアにすることを提案しています。ペアにする理由は、学業のサポートの他に、大人との繋がりを重要視しているから。加え、学校に来られなくとも一人一人が価値のある学習者であると感じてもらえて、学び舎とつながり続けることができるという利点もあるようです。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる