「マローダー2体同時登場」に歓喜した『DOOM Eternal』のコミュニティと、こだわりを貫き続けたid softwareの信頼関係

『DOOM Eternal』を巡る騒動を振り返る

誰もが満足するゲームバランスを要求するか、開発者のこだわりを楽しむか

 そもそも1993年当時、『Mortal Kombat』を中心にゲームの暴力描写が北米で議論の対象となる中、一線を画すレベルの暴力性に満ち溢れた初代『DOOM』はそれ自体が癖のかたまりである。一方で、当時のid softwareは(その時点で前代未聞にも関わらず)快適なオンラインプレイを実現しようと試行錯誤するなど、ゲームをプレイする上での快適性を追求することにも余念がなかった。今のid softwareには1993年当時のメンバーは殆ど残っていないものの、当時の理念は今でも変わらずに受け継がれていると言えるだろう。初代『DOOM』のゲームデザインを担当したジョン・ロメロ氏も現在のチームに対して賛辞を送っている。

 現代のAAAタイトルにおいて、『DOOM Eternal』のように職人のこだわりが詰め込まれ、尖りに尖ったゲームは極めて珍しい。発売当時の感想やレビューで悪評を見たという人も少なくはないだろうが、実は本作を絶賛する人々も今となっては非常に多いのだ。万人が楽しめるようにユーザー目線で調整されたゲームも勿論楽しいが、最初は戸惑ったとしても徐々にその癖に慣れていくことで他にはない面白さを味わえる、そんな頑固な職人のこだわりを楽しめるゲームもまた素晴らしい存在である。

 筆者個人としても現時点での今年のゲーム・オブ・ザ・イヤーは間違いなく本作である。大量に襲いかかってくる敵に対して、状況判断力と瞬発力と一瞬の閃きを駆使して凶悪な武器の数々で駆逐する楽しさは唯一無二であり、隅々まで作り込まれたステージはどれも魅力的で、何度でも飽きずに楽しむことができる。最初こそ対応に時間を要したマローダーも、今や10秒程度で倒せるほどに成長し、来たるDLCで2体同時に相手にすることを心から楽しみにしている。未プレイの方も、是非実際に遊ぶことで本作に込められたid softwareのこだわりに触れていただきたい。

■ノイ村
92年生まれ。普段は一般企業に務めつつ、主に海外のポップ/ダンスミュージックについてnoteやSNSで発信中。 シーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始
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Twitter : @neu_mura

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