コナミ音ゲーが家庭に“戻ってきた”意義 『pop'n music Lively』リリースの背景とポスト・コロナの音ゲーを考える

コナミ音ゲーが家庭に“戻ってきた”意義

ポスト・コロナの音楽ゲームを模索する取り組み

 本稿で述べた施策が果たして実を結ぶか否かについては、この動乱と変遷の時代において確言することはできない。『pop'n music Lively』ベータ版のユーザーアンケートでも、ユーザ属性や現時点での良し悪しといった一般的な項目に加え、コントローラに求める仕様や許容価格、さらに正式サービス版に搭載してほしい機能候補までをも幅広く問う質問項目が設けられている。AC版「pop'n music」と並列するもう一つの「pop'n music」となるであろう本作について、ユーザも巻き込んで全体の最善となる立ち位置を探ってゆこうとする、開発陣の共創的な発想と強い意志をそこに見て取ることができる。もっとも筆者の観測範囲では、『pop'n music Lively』を実際に試用した現役プレイヤーの評判は、本作の存在そのものが指し示す「pop'n music」シリーズそのもののポシティブな現状への喜びも含め、おおむね肯定的のようである。

 ところで前述の通りコロナ禍に伴い延期されていた「BPL」は、時期を1年繰り下げての2021年5月のキックオフが正式に告知されるとともに、リーグの各チームのスポンサー6社全社がスポンサー契約を続投することが決定。2020年度には新たなeスポーツイベント「BEMANI PRO LEAGUE ZERO(BPL ZERO)」を無観客で実施することを宣言した。「BPL ZERO」は次年度のリーグ本戦の楽しさを伝えるプロモーションイベントとして位置付けられており、人気コンポーザー・Ryu☆(EXIT TUNES)、でんぱ組.incの古川未鈴、バーチャルライバーとして人気上昇の著しい社築(にじさんじ)の3人を「監督」として起用。いずれもクリエイターかつエンターテイナー、かつ音楽ゲームのスーパープレイヤーでもあるという逸材にして適材揃いだ。『beatmania IIDX』が拓く道筋は今後、「SOUND VOLTEX」「pop'n music」をはじめ、ほか音楽ゲームも辿ることになるだろう。音ゲーのeスポーツ化の最前線を担う存在として、今後の展開に注目したい。

 「beatmania」による近代AC音ゲーの黎明から23年。ポスト・コロナの音楽ゲームを模索する興味深い取り組みは、まだ始まったばかりである。

(画像=(C)2020 Konami Amusement)

■市村圭
音楽メディア「ポプシクリップ。」編集部所属のライター。音楽誌「ポプシクリップ。マガジン」で音楽ゲームに関するコラムを連載中。 執筆参加作に「ゲーム音楽ディスクガイド2」(ele-king books)。

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