『ONGEKI Vocal Collection 01』
セガ新作音ゲー『オンゲキ』は“応援したくなる主人公”も大事なコンセプトーー赤尾ひかる&春野 杏インタビュー
株式会社セガ・インタラクティブによる、アミューズメント施設向け音楽ゲームの新作『オンゲキ』。同ゲームは『maimai』『チュウニズム』といったセガの音楽ゲームシリーズを手掛けてきたチームによる最新作で、音楽ゲームと「オンゲキシューターズ」という主人公たちのストーリーを進めるキャラクターゲーム、手持ちのカードで戦うカードゲームをミクスチャーしたような、様々な側面から楽しめる音楽ゲームだ。
さらに、この『オンゲキ』はオリジナル楽曲の充実が最大の強みともいえる。上松範康(Elements Garden)やkz(livetune)、宮崎誠、ヒゲドライバー、Tom-H@ck、佐藤純一(fhána)、NAOKIなど、豪華な楽曲提供陣が音楽で作品を彩っているからだ。今回はそんな作品にオンゲキシューターズに声優・歌い手として参加した星咲あかり役の赤尾ひかる、三角 葵役の春野 杏、藤沢柚子役の久保田梨沙と、ディレクターを務める小早川賢氏をインタビュー。2日連続で行われたインストアイベントの裏側に潜入、赤尾と春野・赤尾と久保田のそれぞれを取材し、3人の成長とゲームや楽曲のコンセプト、リリースされたばかりの『ONGEKI Vocal Collection 01』、『オンゲキ』が目指す方向性などについて、じっくりと話を聞いた。(編集部)
「音楽ゲームのライブはプレッシャーが大きかった」(赤尾)
ーー小早川さんにまずは伺いたいのですが、セガの音ゲーシリーズのなかで『オンゲキ』はどのようにして立ち上がったのでしょうか。
小早川賢(以下、小早川):今回のオンゲキという作品以前に、私は『maimai』と『チュウニズム』というアーケード(ゲームセンター)向け音楽ゲームを2作品、作ってきました。その中でも『チュウニズム』は王道の音楽ゲームとしての作りを目指しながらも、色々実験的な試みもやってきたタイトルでして、「キャラクターがゲーム中で使える」という試みだったり、そのキャラクターを使って「声優ユニット」を作ってみたり、チームが面白そうと思ったことをいくつもやってきたんですよね。特に声優ユニット(イロドリミドリ)がすごく好評だったこともあり、次のタイトルではそこで培った経験を生かして、「キャラクター」や「声優さん」がより活躍できるような作品にしたいなと思ったのがきっかけです。また、イロドリミドリでは知名度のある声優さんにご出演いただいたのですが、今度はイチから一緒に作り上げるような形で、いっそ、新人の声優さんにもお声かけして、ゲーム内からユニットを誕生させようと思って立ち上げました。
ーーそうして、実際にオンゲキシューターズの3人である赤尾ひかるさん、春野杏さん、久保田梨沙さんの3人はイチから関わることになったわけですが、この3人になった経緯を教えてください。
小早川:実は3人とも、選考の段階ではプロフィールもないぐらいの状態だったんですよね。キャリアのある声優さんも候補にはいたんですが、声を聴かせていただいたなかでこの3人がキャラクターと合っているなと思って、思いきって選ばせていただきました。
春野 杏(以下、春野):知らなかったです! 今初めて聞きました。
赤尾ひかる(以下、赤尾):嬉しい!
小早川:そこから、ロケテストにメンバーと曲が必要だったので、赤尾さんのソロ曲を早めに収録させていただいたんです。
赤尾:「ロケテスト」と聞いた時に「テスト」というくらいだから、ダメだったらほかのキャストさんになっちゃうんじゃないかって心配だったんですよ……。
ーーそういう意味のテストではないですから(笑)。
赤尾:その時は知らなくて(笑)。ただ、初めは1人でのレコーディングということで、残る2人のキャラと、どうやって関わっていくのか、ストーリーはどうなのかを楽しみにしながら活動していました。そのうち杏ちゃんや梨沙と一緒に練習するようになって、これから頑張ろうって言い合いながら進んでいくようになったんです。
ーーとはいえ、アニメとゲームだと物事の進行する順番も違うでしょうし、音楽ゲームだからこその特異性もありますよね。お互い思いがけなく苦戦した部分もあったのでは。
小早川:そうですね。普通はアニメも、ゲームでもソーシャルゲームだとストーリーありきでお話や収録を進めていくものなんですが、今回は音楽ゲームなので、語る部分がほとんどなくて「歌ってください」というのが主なお仕事になるわけです(笑)。声優さんは歌うことが本業なわけではないですから、僕たちも無茶を言ってるなと感じながら、歌って踊ってくれとお願いしていました。お二人はそのお願いってどう受け止めてました?
赤尾:すごく楽しみだなと思いましたし、音楽がメインだからこそ「下手は許されないぞ」と思って一所懸命練習しました。ダンスは未経験でしたし。杏ちゃんはバレエとかやってたもんね。
春野:いやいや、遠い記憶だから……(笑)。あと、音楽ゲームだからこその面白さなんですけど、普段はアニメ作品がメインのイベントに出演させていただくことが多いので、全く違うゲームファンの方とお会いできるというのは新鮮でしたね。
赤尾:初めてのライブもすぐにノッていただけて、緊張していたけれど一気にやりやすくなりました。
春野:『JAEPO』でのライブには、『チュウニズム』や『maimai』をやってらっしゃる方がたくさん来てくださっていて。シリーズのファンの方に認められたかったので「受け入れてくれー!」と思いながらステージに立っていました(笑)。
小早川:『JAEPO』でのライブが皆さんへの初お披露目でしたもんね。高瀬梨緒役の久保ユリカさんもいましたし。
赤尾:そうですね! 数多くの舞台を経験してきた久保さんが「ホテルで寝る時はマスクしたほうがいいよ」とか「これ飲んだほうがいいよ」とアドバイスをたくさんくださって。
春野:コラーゲンのサプリメントもくださったり、「困ったらすぐ相談して」とも言ってくださって。大船に乗った気持ちで初ステージに上がれました。
小早川:僕も、本当に娘の初舞台を見るお父さんみたいな感じで見てました。他のスタッフにも「これまでにないくらい不安な顔をしてる」って言われたくらい(笑)。結果うまくいったので杞憂に終わったんですけど。
春野:キャラありきのアニメに付属してるものは、歌うことは失敗してもキャラクターを演じることがしっかりできていれば許されるところはあるんですけど、音楽ゲームのライブは音楽が好きで来てくれている人たちですし、プレッシャーは大きかったですね。
ーー結果、ライブはすごく受け入れられたものになりましたし、渋谷での『オンゲキLIVE Vol.0 ~STARTLINER~』も満員で大盛況でした。
赤尾:いざやってみたら、みなさんすごく温かく見守ってくださって。
春野:ファンの方も家族みたいな温かさだよね(笑)。
ーー今日はイベントっていうこともあってだとは思うんですけど、やっぱりアットホーム感がどんどん増してるような気もしますし。
小早川: 二人ともお話もうまいですしね。vol.0ではNAOKIさんと3人の絡みも面白くて。ずっと聞いていたいなと思いましたもん。ユーザーたちも、音楽を聴きに来たつもりが、思わず三人の話に引き込まれてしまう、みたいな。
ーー本当にそうだと思います。三人でのトークがもう完成されているというか、独特の空気感が生まれていますね。
赤尾:トークを評価して頂けているなら、3人でラジオとかやりたいです!
小早川:いいですね。
赤尾&春野:えーー! いいんですかーー!
ーー目の前で新たな企画が生まれる瞬間を見てしまいました(笑)。こうして一緒に作っていってる感じがするのもまた、『オンゲキ』の魅力なのかもしれませんね。
小早川:そうですね、あと3人の魅力もやっぱり大きくて。実際ステージ上ですごく魅力があることもそうなんですけど、すごく一生懸命やっていただいているんですよね。歌もすごい、裏で練習したりとか、自主練したりとかしてるのを見て、僕らスタッフもすごく感動してますし、来てる皆様にもその熱が伝わってると思うんですよ。僕らは立ち上げの際に「今度は応援させてあげたくなるようなコンテンツを作ろう」と思っていたところもあって、それが3人のおかげで良い形に仕上がりつつあるなと感じています。
ーー「応援させてあげたくなる」というのは確かにその通りかもしれませんね。いわゆる未完成な部分はそれぞれコンテンツにもライブにもあると思うんですけど、それを全部、今から自分たちが一緒になって作っていくんだという気概が演者にもファンにも制作スタッフにもあるというか。
小早川:どうしても弊社の音楽ゲームは、外からいろんなお力を借りる作り方が多かったので、自社の中で作ったものの熱量を上げていくということに関しては、ノウハウが足りないところもあるんです。そういう意味で『オンゲキ』は、セガの音ゲーチームが挑戦する新たな形なので、そこを一緒に作り上げるべく、素晴らしい活躍をしてくださっているように思えます。
春野:そう言ってもらえて安心しました。
赤尾:本当に3人がバラバラの性格や声で、違う視点で話せるから、また面白い世界の『オンゲキ』で。でも成長を見守ってくれるファンの方たちとか場所だったりするから、そんなに気負いしなくていいんだって思いますね。
ーーkzさんが手がけたオンゲキシューターズ3人による主題歌「STARTLINER」も、その応援したいという気持ちを加速させる楽曲ですし、オンゲキというサービスをしっかりと多くの方に広める力があると思うんですよ。
小早川:そうですね。kzさんは僕らがずっとお願いしたいと思っていたアーティストなので、この機会にご一緒できて光栄です。
ーー音楽ゲームがルーツの方でもありますからね。
小早川:そうですね。また、ストーリーに対する理解も非常に深くて、特に歌詞では『オンゲキ』というタイトルが向かおうとしている道を表現してくれたと思います。「STARTLINER」はスタッフ一同聴いていて元気になる曲です。
赤尾:レコーディングの時に印象に残っているのは、ディレクションで「この部分は高一の終わりで、ここからは高二の春」と細かく設定をいただいたことですね。
春野:あったあった。「今のは高三になっちゃったなー」とか。
赤尾:「一年巻き戻さなきゃ!?」って(笑)。曲に込められたスタートさを大事にしてらっしゃるんだなと思ったので、高三にならないように頑張りました。
小早川:音楽的にもkzさんは音楽ゲームに関する理解がすごく深くてびっくりしました。私たちが普段、音楽ゲームの音楽を発注する際に、「音楽ゲームに合わせたつくり」に調整させていただくことがよくあるんですよ。
ーーノーツの調整、譜面作りに合わせて曲を調整するということですか?
小早川:そうです。ゲームの譜面作りでは、楽曲の構成に合わせて譜面のレベルデザインを行なっていくんですけど、曲自体が音ゲーとしてレベルデザインしやすい構成をしていると、非常に作りやすいんですよね。そのため、作品ごとに書き下ろすオリジナル楽曲については、音ゲーに作りやすい構成に一部調整させていただくことがよくあります。ただ、kzさんは一番最初の提出データから、ほとんど修正していないんですよね。音ゲーで遊んだら楽しいという構成を、ご自身のなかでイメージされながら曲を作っていらっしゃるのだと思います。実際にゲームをしてみると本当に面白いです。
春野:デモを聴いた時に「ジャ、ジャ、ジャ、ジャー、ジャ、ジャ、ジャ、ジャー」(ボタンを押す動作をしながら)ってなるんだろうなと思って楽しくなりました。