『超かぐや姫!』に登場する「未来の技術」と、“フラット”なインターネットの描き方を見て

『超かぐや姫!』が描くバーチャル文化

※本稿には『超かぐや姫!』のネタバレを含みます。

 現在Netflixで公開されている長編アニメ作品『超かぐや姫!』。SNSを中心に爆発的なバズを見せているこの作品は、約2時間20分の中に、バトルアクション、音楽ライブ、友情物語などの要素がぎっちり詰め込まれた、“エンタメ特化”な作品だ。平安初期に書かれた古典『竹取物語』を話のベースにしつつ、XRやメタバース、VTuberなど、現代の最新テクノロジーとミクスチャーされた世界観が描かれる。

『超かぐや姫!』本予告映像| 2026年1月22日(木) Netflixにて世界独占配信

 女子高生・酒寄彩葉(さかより・いろは)と、突然月からやってきた謎の少女・かぐやの友情を描くこの物語は、現実世界と仮想空間の両方をまたいでストーリーが進行する。

 悪人がいないといっても過言ではないこの作品。「ハッピーエンド」を目指してキャラクターたちがはちゃめちゃに動きまわり「楽しい!」を探していくが、ネガティブなシーンが少ない。テンポもスピーディで、極めて痛快。主要キャラみんなが生き生きと楽しいことや好きなことを謳歌している様子と、そこから生まれる独特なエモーショナルが、多くの視聴者の心を鷲掴みにしている。現在は配信限定公開のため、映画館の大スクリーンで味わいたい、という声がSNSで多数あがるほどだ。

 同作の特徴的なポイントとしては、SF的要素があるものの、ノリとテンポ重視で世界設定については意図的に説明を省いている部分がちらほらあることだ。監督の山下清悟はアニメイトタイムズのインタビューで「自分は、ストーリーの構造がものすごく複雑だったり、SFとして緻密な設定が必要なものにはそれほど興味がないんです。むしろキャラクターの感情の成長や、関係性の描写をメインに置いた作品を作りたかった」と語っている(※1)。キャラクター描写に比重を置くために、視聴者が世界観を各々感じ取ってくれるのを信じて、解説はあえて削ったのだろう。

 とはいえキャラクターたちが多くの人の目に魅力的に映るのは、彼女たちが謳歌しているバーチャル文化・ネット文化の描写が巧みだからに他ならない。今回はストーリー部分のネタバレを避けつつ、作中の「XR」「メタバース」「VTuber」の表現に注目していきたい。

簡単で便利な「コンタクトレンズ型XR機器」

 作中では舞台になっている世界を「今とあんまり変わらない少しだけ未来の世界」と語っている。ところどころで表示される日時を見ると2030年らしい。この世界ではスマホのように、みんなが持っていて当たり前のツールとしてXR機器が登場する。たとえば序盤の現実パートで、彩葉の一人称目線だとARで空間上にディスプレイが何枚も浮いているのに、三人称のアングルになると何もない、なんて表現が説明なしにしれっと出てくる。

 デバイスとして出てくるのはコンタクトレンズ型の「スマコン」と呼ばれるもの。ネットのことを何も知らない状態のかぐやが(彩葉のウォレットを使って勝手に)買えてしまうくらいには、この世界では普及しているもののようだ。なお作中ではモブの中年男性キャラクターがメガネ型の機器を使うシーンもあり、デバイスにバリエーションがあることも匂わされている。

 コンタクトレンズ型スマコンは使用時に光を放つので、使っているかどうかは一応は(アニメーション的には)わかるのだが、それでも着用していているかどうかは他人からはほぼ判別できない。それ故か、彩葉の通う学校には「スマコン禁止」という張り紙がちょっとだけ映り込むシーンもあったりする。

 またスマコンはVRモードとARモードがあるようで、ARモードのときは現実の視界に映像が重なって見えるような描写になる。VRの機能を使う場合は、イヤホンが別途必要で、着用して目を閉じれば、簡単に仮想空間「ツクヨミ」にログインできる。「ツクヨミ」ログイン中は現実世界の情報はシャットアウトされ、自由に仮想空間内を動けるようになる。ゲームのような複雑な動きが必要になる場合は、さらに両手持ちのVRコントローラーも必要になるようだ。

 作中でのスマコンの価格は124,400円らしい。学生には少しお高めだが、日常生活で付けたままARを活用でき、ヘッドマウントディスプレイなしでVR空間に完全ダイブできる超軽量デバイスだと考えると、格安どころではない。2007年に放映されたアニメ『電脳コイル』では子供でも使えるMRデバイスとして「電脳メガネ」が登場していたが、そのさらに軽量版といったところだろうか。今すぐの実現は難しいだろうが、もう少し先の未来ならば、類似したデバイスが開発されることも十分ありうるんじゃないかと夢見たくなる。そんなちょうどいい塩梅のウェアラブルデバイスとして、とても魅力的に描かれている。

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