日本の若者がPodcast番組をもっと聴くようになるには? 10代が自身の視点で考察

日本の10代がPodcastを聴くには?

 ここで、Podcastが動画サービスの開始に向けて動いていることについてもう一度触れたい。いま、周りの友人がコロナ禍で生き甲斐にしているのがYouTubeだ。したがって、「音楽を聴く」という行為に「動画を見る」というオプションがセットになっていて当たり前のような感覚がある。Spotifyが動画サービスを始めようとしているのには若者のこうした価値観が理由のひとつに挙げられるだろうが、もし告知通りSpotifyが動画サービスを開始したとして、YouTubeとの差別化をどう図るのかは未だ予想がつかない。U-streamの生まれ変わりになってしまう可能性もあるように思える。Apple Musicはすでにインタビュー動画の配信などを行なってはいるが、いまいち動画である必要性に欠けている。したがって、YouTubeやTikTokにカバーできない動画機能を音楽サブスクリプションが提案していくことが可能なのかどうかは、まだ定義できない領域のようだ。

 Spotifyが良しとするかどうかは別にして、ASMRという手もあるかもしれない。現在ASMRはYouTubeで展開されているが、著者の周りでASMRを聴いている人たちを調査すると、「寝る前に画面を見ないで聴いている」という人も多く、それならPodcastで公式のASMRチャンネルを作ってもひとつ面白いのではないかと思う。ただ、Podcastは誰でも始めることが出来るため、粗製濫造が進み、Spotifyが第一に提供したい「アーティストの楽曲」からかけ離れたものにならないように注意する必要はあるだろう。

 このASMRチャンネル案から考えられるのは、必ずしも誰をスピーカーにするかだけに焦点を当てる必要はないということだ。番組自体をいろいろな形に展開することが出来るため、そこに着目した誰かが発展的な番組を企画して配信してくれれば、Podcastの可能性は広がるのではないだろうか。

 他のサービスとPodcastを比較してPodcastの長所としては、「ダウンロードができる」という点がある。これは今現在radikoにもない機能で、ダウンロードを利用すれば"放送回丸ごとダウンロード"で通勤・通学のお供にすることも可能だ。このダウンロード機能が果たしてPodcastの発展にどれほど意味を持つのかはわからないが、現代人は通信制限にとても悩まされているのは事実であるため、このダウンロード機能は役に立つだろう。

 筆者は、中学3年の受験期、ちょうど放送がスタートした星野源のオールナイトニッポンをMP3プレーヤーで毎週録音して必死に聴いていた。すでにradikoでAMの聴取は可能になっていたのだが、親が携帯を持たせてくれず古いMP3プレーヤーだけを渡されていたため、森山良子のMUSIC10から録音をして眠りにつき、朝起きたら録音を止めて、10時半から1時まで早送りボタンを押し続けるという、あまりにも前時代的なやり方をしていた。早送りボタンは強く押さないと反応せず、また間違えて二回押してしまうと、1時まであと15分のところまでだったのが音源の最初に戻ってしまい、最初からやり直しで、と、必死になって聴いていた分、あの頃のラジオは特別だったように思う。録音した回はRadikoと違って何度でも聞くことができたため、星野源のオールナイトニッポンの初回放送(2016年3月末)は計10回以上は聞いた。一番最初のメールのリスナーの名前や、一番最初に流した曲(Earth, Wind&Fireの『September』であった)、そしてその前口上までおぼろげに覚えている(イントロをバックに「さて、モーリス・ホワイトね、この間亡くなってしまいましたが……」)。やはり、何度も聴けることのメリットは大きい。Podcastが、MP3プレーヤーにはあってradikoにはない機能を復活させてくれたら、10代ながらも著者は嬉しい限りである。

 Podcastはまだ発見したての開拓地だ。その可能性は、アメリカだけでなく日本にも広がっているし、日本の10代にとっても有意義なコンテンツになるはずである。近い将来、友人とPodcastの番組について、ジュースを片手に語り合う日が来ることを願っている。

〈Source〉
Edison Research, Triton Digital(March 19, 2020)「The Infinite Dial 2020」http://www.edisonresearch.com/wp-content/uploads/2020/03/The-Infinite-Dial-2020-U.S.-Edison-Research.pdf(2020年8月25日閲覧)
Edison Research, Triton Digital(March 6, 2019)「The Infinite Dial 2019」p.52、https://www.slideshare.net/webby2001/infinite-dial-2019(2020年8月25日閲覧)

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