私たちはTikTokを削除するべきなのか? 中国企業に対する各国の厳しい対応から考える

私たちはTikTokを削除するべきなのか?

 FacebookやInstagram、Twitterも不定期投稿の筆者は、TikTokの流行の波に完全に乗り遅れました。乗り遅れたと思っていたら、いつの間にかTikTokが世界で最も恐れられるSNSになっていたようです。

 7月7日、米国務長官のMike Pompeo氏がFOXニュースに対して、中国政府による監視やプロパガンダとして使用される懸念があるとして、ホワイトハウスがTikTokの使用禁止を検討していると語りました。インドでは既に同様の措置を取っており、6月30日からインド国内で同アプリにアクセスできないようになっています。

 米銀行のWells Fargoはプライバシーを考慮して、従業員の社用携帯電話からTikTokアプリを削除するように指示していますし、民主党全国委員会(Democratic National Committee)と共和党全国委員会(Republican National Committee)もTikTokを使ったキャンペーンに警告を鳴らしています。

 また、これは後に「誤りだった」と誤送信であったことが伝えられていますが、7月10日にAmazonの従業員がTikTokアプリを会社のスマホから消去するよう指示したメールが送られています。

なぜTikTokが恐れられているのか

 最大の理由は、TikTokは中国のByteDanceという運営元企業の米子会社だからです。中国が背景にあるので、ユーザーのデータが中国政府に渡っているのではないかと懸念する声が米国内であがっているのです。

 その不安を裏付けるべく、こんな動画がTwitterに投稿されました。

 これはプライバシー機能が強化されたiOS14が、TikTokがクリップボードの内容を1文字入力するたびに取得していることを知らせているものです。

 TikTokによると、アプリはクリップボードの情報を収集しているのではなく、iOS14で通知が出るのはスパム行為を識別する機能が原因だとして、既に修正版をApp Storeに申請済みと話しています。しかし、このリアルタイムで警告が表示される様子をとらえた動画はインパクト大で、TikTokに対する不信感を助長させることになりました。

 ただ、クリップボード内容を取得しているのはTikTokだけではないと『The Verge』は指摘しています。フリーランスに必須のLinkedInを始め、 PUBG Mobileなど、50以上ものアプリが同様のことをしているにもかかわらず、そちらは大きな問題になっていません。ではなぜTikTokだけが槍玉にあげられているのか? 『The Verge』は、「多くの人々が、中国が背景にあるものを受け入れられない」と書いています。

中国恐怖症

 TikTokは米国内で運営されているものの、前述の通り、会社は中国に拠点をおくByteDanceが所有しています。そして、ByteDanceが日常業務をどれくらいコントロールしているのかは分かりません。

 もともと、アメリカは中国に対して、何十年にもわたるハッキングや知的財産の侵害により不信感を募らせてきました。そこに、新型コロナウィルスが原因で対中感情の悪化。かねてから米連邦通信委員会(FCC)は、中国企業のファーウェイとZTEを米国市場から排除する取り組みを進めてきました。欧州は限定的にファーウェイの参入を認めていたものの、コロナ禍による対中感情の悪化を理由のひとつとして、21年以降ファーウェイ製品の新規導入を禁止し、27年までに5G通信網から全製品を排除する方針を決定。フランスも28年までにファーウェイ製品を5G通信網から排除する方針を発表しています。

 TikTokも、中国のスパイ活動に対する米国の懸念の矛先となっていると、『The Verge』は書いています。いっそ報じられている通り、セコイア・キャピタルなどの米国企業がByteDanceを買収して、完全に中国と切り離せば安心なのかもしれません。

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