歌広場淳が語る“憧れの格ゲープレイヤー” バーチャ神・ちび太から、レジェンド・梅原大吾まで

歌広場淳が語る“憧れの格ゲープレイヤー” バーチャ神・ちび太から、レジェンド・梅原大吾まで

 大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」。今回は、歌広場淳に「憧れのプレイヤー」について語ってもらった。

 ゲームの“楽しみ方”を教えてくれた、ゲームセンターのお兄さんから、“バーチャ神”ちび太、格ゲー界のレジェンド・梅原大吾、はたまた「ゲームはうまくなければいけないのか!?」という独自の理論に救われたという、知る人ぞ知るプレイヤーまで。古くからの格ゲーフリークも、あまりゲームをよく知らない人も、「人との出会い」という普遍的なテーマが貫かれたエピソードが満載なので、ぜひ耳を傾けていただきたい。(編集部)

ゲームの楽しさを教えてくれた“KOFのお兄さん”

 今回は僕が「憧れた格ゲープレイヤー」について語りたいと思います。

 いきなりですが、一人目の方は有名なプレイヤーではありません。誰かというと、小学生時代にゲームセンターで出会った、高校生のお兄さん。当連載の「いまだから語りたい、懐かしきゲームセンターの思い出」でも触れましたが、当時、僕は『THE KING OF FIGHTERS(KOF)’97』をプレイしていて、お兄さんが使っている、見たこともないキャラクターに目を奪われたんです。

 それは“炎のさだめのクリス”という、隠しキャラクター。使用するにはキャラクター選択画面で複雑な隠しコマンドを入力する必要があり、当時は今のようにインターネットも発達していなかったので、ほとんど情報が出回っていませんでした。僕はどうしてもこのキャラクターが使いたくて、勇気を振り絞って、そのお兄さんに話しかけたんです。僕は引っ込み思案でしたし、ゲームセンターで人と話したのは、それが初めてのことでした。それまでは、そもそも「この人と話してみたいけれど、どうやって話しかけよう」と悩んだことすらなかった。思えばこれが、「ゲームの楽しさは、ゲームそのものに加えて、ゲームを通した人とのコミュニケーションにあるのではないか」ということに、初めて気づいた出来事でした。

 お兄さんは優しく応じてくれたのですが、どうやら隠しコマンド自体を「上から下にレバーをグルグルしてボタン3つ」みたいにアバウトにしか把握しておらず、実際にキャラクター選択画面で言われたとおりにしたものの、失敗してばかり。しかもこの隠しコマンドを失敗すると、不本意にキャラクターが1人決まってしまうんです(笑)。KOFは1チーム3キャラクターで戦うゲームですが、3回失敗して3体とも適当なキャラクターが選択された僕にお兄さんは「このキャラは使えるから、一緒にやろうよ」と分担してゲームをすることに。結果的に「隠しキャラを出す」という目的には失敗してしまったものの、それはそれで今までにないゲーム体験として衝撃的で、楽しかったんです。憧れというか感謝の気持ちがすごく強いって言うべきなんですかね。でも、そのことは、今に至るまで僕がよりゲームにのめり込むきっかけになったし、「ゲームを通して人を見る」という初めての経験として、強く記憶に残っています。

“バーチャ神”ちび太との出会い

 その後、兵庫から千葉に引っ越して、出会ったのが『バーチャファイター』シリーズの神=バーチャ神こと、若き天才「ちび太」というプレイヤーでした。当時、高校一年生の僕にとって、格闘ゲームは大人(経験者)が勝つもので、自分くらいの若い世代のプレイヤーが活躍するというのは、夢のような出来事だった。そんななか、特に大人のゲームだと言われていた『バーチャファイター』で“神”と言われる「ちび太」とは、どんな人なんだろうと。僕はKOFのお兄さんの影響で、ゲームを通じて知らない世界、知らないものを知ることの感動を知ってしまっていたので、どうしてもこの人に会ってみたい、と思うようになりました。

 しかし、今のようにSNSもないので、どこに行けば彼に会えるのかも、まったくわからない。そんななかで、当時通っていたチャリオットというゲームセンターの系列の、ゲームチャリオット辰巳店という店舗で、ちび太さんの組手イベントが行われたんです。当然、僕も勇んで参加しましたが、千葉の片田舎に名だたる有名プレイヤーたちが大勢駆けつけていて。今思えばあれは、ゴールデンボンバーで初めてテレビ局に行って、「芸能人の社交場やん!」と色めき立ったときと同じような興奮を覚えました(笑)。そんな中で僕は、ちび太さんのプレイを後ろから食い入るように見ましたが、本当に何が起こっているのかわからないくらいスゴかった。ミーハーな取り巻きの一人として、一生懸命話しかけたのを覚えています。

 このイベントは、1~2ヶ月に1回開かれるようになって、2回目に足を運んだとき、ちび太さんが「淳!」と声をかけてくれたんです。無数にいるファンのひとりなのに、“認知”してくれていたことがめちゃくちゃ嬉しかったのと同時に、「スタープレイヤーは全く別世界の人間ではない」ということに漠然と思いが至って。うまく説明できないのですが、彼らの信じられないような強さは魔法なんかではなく、自分の延長線上のどこかにあるんだ、ということを感じたのを覚えています。

 その後、学生でお金もなくて、プレイはできないけれど、とにかくちび太さんに会いに行く、ということを続けていたら、ある日、「淳、ゲームしてないじゃん! これあげるよ!」と言って、まさかの1000円をくれたんです。そのお礼をずっとしたいと思っているのにいまだにできていないのですが、プレイヤーとしてスゴイだけではなく、ただただキッズだった僕に予想外の行動をとるという、人間としてこんなに面白い人がいるんだ、という衝撃をいくつも与えてくれました。

格闘ゲーム界のカリスマ、梅原大吾を探して

 誰もが知る格ゲー界のカリスマと言えば「梅原大吾」でしょう。今のように動画でプレイを見ることもできなかった時代だからこそ、当時は「反応が神」「連続技がヤバい」など、抽象的な話でみんなが盛り上がり、のちにご本人が否定している「小足見てから昇龍余裕でした」(発生が極めて速いしゃがみ弱キックを見て、昇竜拳で刈り取っていた)という伝説的な話も生まれました。ただ、僕はちび太さんとの交流で「スタープレイヤーだからといって魔法使いではない」ということを理解していたので、どうしても実際にプレイを見てみたいと思い、新宿や秋葉原のゲームセンターをうろついたことがありました。が、結局出会うことはできず、代わりに『ストリートファイター』シリーズの人気プレイヤーたちを探してみたのですが、今思えば、顔がわかるのは梅原さんや、それに並ぶスターだった“ヌキ”こと大貫晋也さんくらいだったので、他のプレイヤーには遭遇してもわからなかったかもしれませんね(笑)。

 その後、インターネットが広がるのと同時に、どこに強いプレイヤーがいるのか、ということが可視化されていき、さらにミーハー心が刺激されるようになりました。『バーチャファイター』シリーズで言えば、各地域にチームがあり、それぞれにスタープレイヤーがいて、群雄割拠の時代に。「新宿ローパンチカット」の超イケメンプレイヤー・セガール、プレイスタイルがめちゃくちゃカッコいい「静岡お茶の会」のムッキー晶、「関西山王会」のカリスマ・虎龍……などなど、格ゲーをよく知らない人には何のこっちゃわからないと思いますが、例えるなら『HiGH&LOW』のような世界観で、ゲームと地域性がリンクしていったんです。

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