歌広場淳が語る“憧れの格ゲープレイヤー”　バーチャ神・ちび太から、レジェンド・梅原大吾まで

師匠である「伝説のオタク」、その主張に救われた「朝岡プロ」

　その後も名前を出したらきりがないくらい、多くのプレイヤーに憧れました。それも、ただ強いだけでなく、キャラクター選択や、活動に個性のある人が好きでした。

　例えば、スター選手が多い『STREET FIGHTER III 3rd STRIKE』では、僕と同じケン使いで、ネットの掲示板で攻略情報を共有してくれていた「一ッ目」さんや、トゥエルヴという決して強くないキャラクターを使い、トリッキーなプレイスタイルで勝ちを積み重ねていた「地球」さん。『ギルティギア』シリーズだったら、戦ったら絶対にキレてしまう自信がある「クソル」さんも好きだし、『CAPCOM VS. SNK』（カプエス）だったら、僕の師匠であり、キャラクター選択もプレイも、本人の様子のおかしさも最高な「伝説のオタク」さんも憧れです。

　また、一般的な意味での「有名プレイヤー」ではないのですが、僕がここ15年くらい、ずっと会いたいと思い続けてきたのが「朝岡プロ」という、東海地方で活躍されていたプレイヤーです。ネットが普及し始めた当時、「魁！あばれ塾」というホームページを作っていた方で、一般には否定されがちな「暴れ」（一例として、リスク度外視で技を連打し、近距離戦を打開するプレイ）について、「暴れは巧いとかテクいとか、魅せるプレイとはまったく別の個性だ」という論陣を張っていました。「ゲームは“誰かに褒めてもらうために”うまくなければいけないのか！？」という強い主張にずっと救われてきましたし、いまも僕の憧れです。

現役若手プレイヤーなら「カワノ」選手がイチオシ

　まだまだ語りたいプレイヤーは大勢いますが、今現在アクティブに活躍している若手プレイヤーなら、『ストリートファイターV』で頭角を現している、カワノ選手が最近の注目株です。これまで当連載でも取り上げてきたように、僕はナウマン選手という正統派／主人公的なスターの活躍を誰よりも喜んだファンの一人なのですが、一方で、「ゲームを使ってのし上がってやろう、自分というものを表現してやろう」というギラギラしたものを感じ、発信力も行動力も素晴らしくて、そのうえで見た目もイマドキの若者であるカワノ選手は、ヴィラン的な魅力に溢れています。

　いまは有名プレイヤーの対戦動画がいくらでもチェックできますし、昔のようにゲーマーの間でまことしやかに語られる「伝説」もほとんどなくなりました。一方で、日々行われているライブ配信などを見れば、名のあるプレイヤーはそれぞれに、本当に魅力的だということがわかります。翻って考えると、だからこそ特定のプレイヤーに「憧れ」を持つのが、かえって難しい時代かもしれませんが、「人」にフォーカスすると、面白さが倍増するのが格闘ゲームの世界。“推し”を探している人には、もちろんレジェンドプレイヤーもいいですけれど、ここは敢えて、若手のナウマン選手とカワノ選手を憧れとして、彼らの活躍を期待するのもまた面白いかもしれません。

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