新型iPhone 12は環境に優しくない? 「携帯市場における持続可能性」問題の大きな分岐点となるか
ここ最近、iPhone 12の情報が次々とリークされている。一方で、Appleや業界全体が携帯電話をより環境に優しいものにすべく、根本的な再設計を行うべきだ、という議論もなされており、その矛先がiPhone 12へ向くことになりそうだ。
先のダボス会議・世界経済フォーラムでは、スマートフォン等、電子廃棄物の問題について、議論が行われた。 E-waste CoalitionとWorld Business Council for Sustainable Developmentの共同調査によると、電子廃棄物の物質価値は世界全体で625億米ドル(約6兆8000億円)で、世界の銀鉱山の年間生産量の3倍にも達している(参考:https://www.forbes.com/sites/jeroenkraaijenbrink/2020/02/03/why-isnt-the-new-iphone-12-more-eco-friendly/#37b8358e27b3)。
これを報じた『Forbes』は、「より環境に優しい電子機器の必要性」について強く訴えている。
電子廃棄物(化学物質、プラスチック、スクリーン、鉱物等)は、世界で最も急速に増えている廃棄物のひとつだ。国連はそれを「電子廃棄物のツナミ」と呼び、深刻に捉えている。気候変動と経済的観点から対策の緊急性は明らかだが、携帯市場は成長分野であり、電子機器の需要の高まりから、鉱物やその他の天然資源が不足している現状。将来的には、スマートフォン生産に必要な天然資源は枯渇するとされている。
エレクトロニクスの製造メーカーは、製品とプロセスを環境に優しいものにする必要があると見られる。例えば、『Rank a Brand』のブランド持続可能性・エレクトロニクス部門の格付けにおいて、Aには該当するメーカーがなく、Bも環境への影響を最小限に抑えて設計および製造されたスマートフォンの開発を目指すオランダの企業・Fairphoneのみ。AppleはCに格付けされている(参考:https://rankabrand.org/electronics)。
なぜAppleに厳しい目が向けられるのか?
同記事で『Forbes』は、なぜAppleに厳しい目を向けるべきなのか、次の5つのポイントを指摘している。
(1)Appleは企業として世界で2番目に高い時価総額(1兆4,000億米ドル・約153兆円)で、年間総利益は約1,000億米ドル(約10兆1,000億円)だった。
(2)「人はそれを提示するまで、何が欲しいか知らない」と故スティーブ・ジョブズ氏が言ったように、Appleは顧客に影響を与え新たな市場を創造することを目指している。
(3)Appleは、ソフトウェア、ハードウェア、コンテンツ等、バリューチェーンすべてを完全にコントロールできる。
(4)Appleは、かつて競合他社をはるかに上回っていたが、もはや遅れをとっている。再び業界のリーダーになるために、環境対策が必要だ。
(5)Appleは、iPhoneを分解するリサイクルロボットに投資することを1月に発表し、既に動きだしている。
Appleの環境・ポリシー・社会的イニシアチブ担当バイス・プレジデントのリサ・ジャクソン氏は以前、持続可能な製品に対するAppleのコミットメントは明確だが、必ずしも完全に実現されているわけではないと述べている(参考:https://www.independent.co.uk/life-style/gadgets-and-tech/features/iphone-11-apple-lisa-jackson-interview-green-sustainable-environment-a9151341.html)。世界的な影響力も大きいうえ、現状を把握し、準備を進めているApple社には、各国から注目が向けられており、今回の指摘もそのひとつ、というわけだ。