中田敦彦が語る、変わりゆくメディアとタレント・YouTuberの環境「Googleがすでにテレビ局みたいになっている」
芸人として若くして大ブレイクを果たす一方で、昨年には自身のオンラインサロン「NKT Online Salon」を開設、またアパレルブランド「幸福洗脳」を軌道に乗せるなど、ビジネスパーソンからも関心を集める、オリエンタルラジオ・中田敦彦。そんな彼が3月、新刊『労働2.0 やりたいことして、食べていく』(PHP研究所)を上梓した。
本書は副題にある通り、「好きなことで楽しく稼ぐ」ための思考法やノウハウが満載で、彼がいち早く注目していた「YouTuber」という職業/生き方にも通じる部分が大きい。
リアルサウンド テックは、都内某所で講演前の彼を直撃。フィッシャーズや水溜りボンドなど、YouTuberに着目した理由から、近年でのメディア環境の変化、YouTubeに進出するタレントが抱える問題点に、進路を考える若い世代へのメッセージまで、じっくりと話を聞いた。(編集部)
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YouTuberは「矛盾を孕んだ存在」
――『労働2.0 やりたいことして、食べていく』は新しい働き方がテーマです。本の中でもYouTuberについての言及がありましたが、サブタイトルの「やりたいことして、食べていく」のモデルケースのひとつといえます。
中田:あのキャッチコピー(2014年のYouTubeのCMキャッチコピー「好きなことで、生きていく」)から、完全にパクっているんですけど(笑)。あれは時代の転換期をあらわした、秀逸なコピーでしたね。メディアというものが、大手の放送局だけのものではなくなり、ネットを通じて個人でも発信できて、そこで収益も生まれるようになった。“新しい時代が来た”という雰囲気でしたよね。
――今でこそ、タレントがYouTubeに進出することは珍しくないですが、中田さんはいち早くYouTuberに注目されていたように思います。
中田:僕は3~4年前くらいに、YouTuberのことを研究していたんですけど、その中でフィッシャーズや水溜りボンド、現在は解散してしまったカリスマブラザーズたちと、交流をとりながら勉強させてもらっていましたし、新しい生き方として、希望を見出していました。その一方で、今はさらにYouTuberをとりまく環境は変化しているとも感じています。
――それはどのような変化でしょうか?
中田:先日、JJコンビ(元カリスマブラザーズのジョージとジロー)と飯を食ったんです。そこでもYouTuberの変化についての話になりました。Googleの方針が厳しくなって、過激な映像は潰されてしまうし、新規参入が増えたことによるレッドオーシャン化、視聴者を飽きさせないアイデアを出さなければならないし、YouTuberだけじゃなくてライバーも台頭してきた。そんな中で彼らも挑戦を続けているんです。ここ数年、よく「TVかYouTubeか」という議論もありましたが、それも今思うと雑な議論だったと思います。
――中田さんは、今のYouTubeをどう見ていますか?
中田:YouTuberも結局のところ、広告収入をメインとした職業だった。新しいメディアが台頭すること自体は面白いけど、お金の軸を作ることは別の話ですし。それに、YouTuberの世界も、HIKAKINやフィッシャーズがトップを走りつづけていて、それを越える存在が出てきていない。YouTuberのマネジメント事務所も、UUUMの一強になってる。今後どうなるのかは、静観はしています。「YouTuberの事務所」も、それ自体が新しい概念ですよね。これまで、大手芸能事務所は、メディアの中で幅をきかせていた。だからこそ、そこを通すことで中間マージンをとるというシステムが成立していたでしょう。しかし、YouTuberは個人がチャンネルで収益を上げているところで、どんな理由で事務所が入ってくるのか。HIKAKINへの憧れから人が集まってきたとはいえ、今後人材が飽和した後、どうなるのかわからない。矛盾を孕んだ存在だと思いますね。
――とはいえ、既存の芸能界と違う立ち位置を確立していると思います。
中田:でも、Googleがすでにテレビ局みたいになっているよね。テレビ局やスポンサーが「NO」といえば、コンテンツの方向性も変わるので、単純にプラットフォームが変わっているだけで、同じようなメディアではあると思います。