「cluster」はVRプラットフォームの中心となるか? サービスの変遷から見る課題と可能性
「cluster」というバーチャルイベントに参加・開催できるサービスをご存じだろうか? 「cluster」は、VR機器を通じてバーチャル空間で行われるイベントに参加できたり、自分でイベント会場を開設できるサービスとなっている。本記事では、「cluster」がこれまで行ってきた施策を紹介しつつ、2018年10月に行われたカンファレンス『cluster2.0~これまでとこれから~』で発表された今後の取り組みについて触れていきたい。
「cluster」は、“VR元年”と呼ばれている、2016年の2月にα版がローンチした。α版には、会場内で動画を再生できる機能や全天球画像を全員で見られる機能があったりしたようだ。もしかすると、これらは今後の取り組みのなかで実装されるかもしれないとのこと。
その約1年後の2017年6月に「cluster」が正式リリース。やはり当初はサーバーダウンするなどのトラブルに見舞われたそうだ。その2か月後には、“あんたま”と呼ばれるバーチャル上で会えるアイドルのイベントを支援。このイベントは『コミックマーケット92』に合わせて行われ、「フォローを1万人集めるとメジャーデビューできる」というものだった。今のバーチャルYouTuberブームが来る前の出来事だったため、時代がついてこれず大きな話題となることはなかったわけだが。それでもこの出来事は、筆者の記憶には鮮明に焼き付いている。その後、本イベントは9月いっぱいでフォロー1万人を次なる目標にし、みごと達成。今年2月には2人から5人にメンバーも増え、今では“えのぐ”としてアイドル活動をしている。
2018年4月からはアバターのアップロードが自由化され、それからバーチャル上でのイベントには欠かせないサービスとなっていく。月ノ美兎によるユーザー参加型のイベントなどなど、これまで「cluster」上でバーチャルイベントが幾度となく開催されている。
その後、「cluster」に1つのターニングポイントが訪れる。それは2018年8月に行われた輝夜月のライブだ。本イベントは「cluster」にて開催され、加えてライブビューイングも実施。両方の来場者を合わせると約5000人を動員した、直近で最大規模のバーチャルイベントでもあった。また、チケット制の有料参加の取り組みも「cluster」上で初だった。
とはいえ、ここまで成功ばかり収めてきたわけではない。先日行われたVRハロウィンイベント『バーチャルハロウィン in cluster』はネットワーク回線のトラブルに見舞われ、延期を余儀なくされた。VR上でのイベントとなると、まだ誰も踏み入れたことのない未知の領域。やはり現場を試行錯誤のなかで進行していることもあり、課題が山積みの状態とも言えるだろう。もちろん、イベントを心待ちにしているファンも多くいるため、不測の事態が起こらないことが一番だが、これから誰かが切り開いていかなければならない道でもある。そして今後、同様なことが「cluster」やそのほかのサービスでも起きないとは言い切れない。シーンを応援するファンとしては、時として、前向きなチャレンジに付随するトラブルは楽しむ余裕が必要になるかもしれないと、今回の一件から感じた。