誰でも“可愛い声”のVTuberに? ボイストランスフォーマー「VT-4」実機レビュー

誰でも“可愛い声”のVTuberに? ボイストランスフォーマー「VT-4」実機レビュー

 「ボイスチェンジャー」というものがある。これはその名の通り入力した声を加工して出力するエフェクターの一種であり、設定次第で様々な声色を操ることができる。

 そんな「ボイスチェンジャー」が近年、バーチャルYouTuber界隈を発端にして大きな注目を集めている。今回はその背景説明と、Rolandから新たに発売されたボイストランスフォーマー『VT-4』の実機レビューを併せて行っていこうと思う。なお、VT-4は厳密に言えばボイスチェンジャーではない、ということ注釈として先に記しておく。

可愛い女の子になりたいという欲求

 バーチャルYouTuberは、ガワ(見た目)を自由に作れる。なろうと思えば男にでも女にでも、果てはガイコツにでもなんでもなれる。もし生まれ変われるのならば可愛い女の子になりたいーーそんな妄想をしていた一部の男子に取って、この文化はまさにうってつけだった。

 何より、「のじゃおじ」ことねこます氏の登場はまさにその思想に寄るところが大きい。彼は「狐娘になりたい」という欲望をたった一人で追い続け、実現した。事実「彼に影響されてバーチャルYouTuberを始めた」という人は後を絶たない。今ではある程度のノウハウがネットでシェアされ、誰でもやろうと思えば(ある程度苦労すれば)モデルを作ることができる。この環境があるのも、ねこます氏が先立って知見を広くシェアしていたおかげだろう。

バーチャル狐娘Youtuberおじさん。はじまります。【001】

立ちはだかる“声”という壁

 3Dもしくは2Dのモデルに自分の動きを対応させるバーチャルYouTuberというシステムは、大勢の”外見”を美少女へと変えた。しかし「声」だけが大きな課題として彼らの前に立ちはだかり続けた。ある者はそのままの声で。ある者は最初から喋ることをせず。ある者はボイスロイドに代弁させ。そしてある者は自分の声を加工することに心血を注いだ。

 初期からボイスチェンジャーを使っているバーチャルYouTuberの参考例を出したいが、名指しで「これはボイチェンだ」などと言うのは野暮に他ならない気がするので、やめておく。とにかく、バーチャルYouTuberの流行と同時に、いくつかのボイスチェンジャーに注目が集まり始めた。筆者が覚えているのは「恋声」、「神ボイスチェンジャー(VCS)」、「Rovee」、そしてVT-4の前身である「VT-3」。多くの人間がこれらに手を出し、そして絶望する。何故なら、ボイスチェンジャーで「可愛い女の子の声」を出すのは至極困難だからである。恥ずかしながら筆者も夢を打ち砕かれた者の一人だ。ボイスチェンジャーによってはいくらパラメータを調整しても、みんな「同じような声」になってしまう、これも問題であった。多少可愛い声が出せたとしてもこれではアイデンティティが担保できなかったのである。

バ美肉文化の隆盛

 そんな折、にわかに「バ美肉」という言葉がインターネットで散見されるようになった。どこから説明したらいいのか困るが……まず辿らなければいけないのは「イラストレーター」だろうか。

 そもそもバーチャルYouTuberには元々イラストレーターの人間が多い。モデルの製作、特にLive2Dモデルに関しては彼らの土俵だからだ。そんな「本業イラストレーター」のバーチャルYouTuberの中でも、自分のことをぼかさず「元々イラストレーターのおじさんです」と公言している人々が集まり、少しずつ界隈を作り始めた。

 その代表格と言ってもいい「りむちゃん」と「まきちゃん」、「魔王マグロナ」氏らが2018年6月に生放送で企画した「バーチャル美少女セルフ受肉おじさん女子会ワンナイト人狼」───略して「バ美肉おワ人狼」こそが「バ美肉」の語源である(アーカイブが無いようなので同じ系譜を持つ別の動画を貼っておく)。

第一回・バ美肉おじさん人狼【バーチャル美少女受肉おじさんワードウルフ】

バ美肉の意味

 前述したように、「バ美肉」とは「バーチャル美少女受肉」の略称である。厳密に言えば「バーチャル美少女受肉したおじさん達がワイワイしている地獄のようなコンテンツ」を指すものだ。なお「地獄のような」というのもかなり重要で、この言葉は彼らーーバ美肉おじさん達ーーがやっている「コンテンツ」を端的に表す為によく用いられてきたものである。このように本来は「おじさん」「地獄」という意味合いを含んでいるのが「バ美肉」なのだが、あまりに語感がキャッチー過ぎたせいか今では「バーチャル美少女の肉体を手に入れる」という広い意味で使われがちである。ちなみに、「受肉」という言葉だけであれば、「委員長」こと月ノ美兎が2018年4月にclusterで行なったイベントでも登場している。初の3Dモデルお披露目イベントで彼女が放った言葉が「受肉した」であった(なお、宗教用語である「受肉」とは一切関係無い)。

月ノ美兎のVR教室生放送

 もしバ美肉文化に興味を持ったのなら、2014年から活動している「みゅみゅ教授」を分析しても面白いかもしれない。

バ美肉おじさんの中でも異彩を放つ「魔王マグロナ」

 バ美肉おじさん達はバーチャルYouTuber界隈に「新しい地獄コンテンツの面白さ」を上手く広めたが、その中の一人である「魔王マグロナ」氏はもう一つの衝撃を界隈に与えた。それこそが「ボイスチェンジャー」の圧倒的な効果である。

深夜のINFINITASテストはいしん

 これは現時点で彼のチャンネルにある最新の生放送アーカイブだが、この通り女の子の声にしか聞こえない。彼自身が「おじさん」であることを公言している以上、ここでは彼を「彼」と呼ぶが、もはやそれすら憚られてくるほどに彼は女の子にしか見えない。なお筆者は彼のくしゃみを聞いて普通に心臓が跳ねた。記事冒頭で「ボイスチェンジャーで女の子の声を出すことは難しい」と述べたが、”不可能では無い”ということを広く知らしめたのは間違いなく彼だろう。結果としてボイスチェンジャー、特に彼がよく使用している「恋声」及び「VT-3」は再び注目を集めることとなった。彼の詳しいプロフィールについてはネットに多くの記事があるのでそちらを参照してほしい。

恋声 ダウンロードサイト

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