YouTuber・恭一郎の“歌”はなぜ人気なのか? 視聴者とのコミュニケーションを重視する、独自のスタンスを探る
コミュニケーションツールとしての音楽
しかも恭一郎は、得意とする音楽を「カラオケ配信」などの企画で生配信することによって、視聴者と距離の近いコミュニケーションを行っている。コメント機能などを活用し、視聴者のリクエストに応える形は、まさにネットならではの音楽活動といえるだろう。
動画投稿がメインとなるYouTuberにおいて、生配信をするクリエイターはあまり多くはない。音楽活動を行うYouTuberのほとんどは、自らの活動に対する思いや視聴者へのエールを曲にして届けている。つまり、自らのスタンスを改めて提示するために音楽を活用しているのだ。しかし、恭一郎の場合は、あくまでも視聴者とのコミュニケーションツールとして音楽を用いている。約10年もの間、生配信を続けてきた恭一郎に対する視聴者の信頼は厚く、その距離の近さはYouTuber界1と言っても過言ではない。
カバー、オリジナル問わず多くの楽曲を発表してきた恭一郎だが、ほとんどリリースがないのも、収益や話題性よりも、視聴者のコミュニケーションを第一に考えているからだろう。
意外なYouTuberとのコラボも
近年では音楽をきっかけに、他のYouTuberとのコラボも多くなっている。音楽系YouTuber・LambSoarsとは、共に多くのカバー曲動画を投稿。さらにラーメンYouTuber・SUSURUも加えた3組での演奏を披露するなど、意外な組み合わせに驚かされることもしばしばだ。またスカイピース・じんの誕生日動画「スカイピースじんの誕生日を色々なYouTuberがラップで祝ってくれました」にも出演し、その交友録がどんどん広がっていることを感じさせる。
U-Fesをはじめとするイベントにも出演する機会も多く、8月4日、5日に行われた「U-FES.Music」ではアバンティーズ・エイジとのラップバトルで会場を沸かせるとともに、ラップスキルの高さを改めて見せつけた。
音楽をコミュニケーションツールとして活用することで、視聴者と信頼関係を築くだけではなく、YouTuber同士の横の交流も深めてきた恭一郎。その姿勢は、プロのアーティストとは少々異なるかもしれないが、だからこそYouTuberにとって指針となるスタイルと言えるかもしれない。
(文=馬場翔大)