さやわかのゲーム放談
さやわかのゲーム放談 第1回:『メタルギア サヴァイブ』に思う、「死にゲー」を享受する条件
歯ごたえがあった『メタルギア サヴァイヴ』
そんなわけで『デモンズソウル』ほどじゃないけど、死が納得できるものだった『メタルギア サヴァイブ』。なかなか歯ごたえのある、いいゲームであった。ストーリーや演出は、本編である『メタルギアソリッド』と比べると当然ながらいくぶん平板だけど、ゲームとしてはちゃんと面白い。
ただ、放っておいたら人が死ぬのに納得できるからこそ、気になるところはある。まずせっかくゾンビが主題なのに、主人公が死んでサクッとセーブポイントから復活するところには何の演出もなかった。まあすべてのゲームが『デモンズソウル』みたいにするべきというわけじゃないけれども。
ただ超細かなことのようだけど、どうしても気になるポイントがあった。酸欠死する霧の中だと、今向いている方角すらわからなくなるのが、ちょっと受け入れがたかったのだ。
そもそもこの霧に入ると、マップ上に自分の現在位置が表示されなくなり、目的地を示したマーカーも画面上に出なくなる。マップの意味ないじゃん! と、衝撃を受けるところだが、一般的なオープンワールド型のゲームへの反抗心かな、挑戦的だな、と好意的に解釈することはできる。
ただですね、自分がどこにいるかもわからず、目的地もわからないと、味気ない霧がかった空間をウロウロするゲームになってくるわけだ。どこにいるかわかなくても、どっちに進めばいいかは、ゲームとして、わかっていたい。
とりわけ変なのは、霧の中にいても、敵が近づいてきたとき主人公のまわりに浮かぶリング状のセンサーには、東西南北が表示されるのです。おそらくこれが方位をプレイヤーに教えるための救済措置なんだろう。でも、ヘタにそういうルールがあるからこそ、気になってしまう。霧の中でもコンパスくらい、しじゅう見えるんじゃないですか。なぜ見えないんだろう。なぜ敵が来ると見えるんだろう。
敵が周囲にいない状況だと適当にウロウロするしかなくなってしまい、何となくイライラする。それで霧の濃くなってる場所でどっちを向いているかわからず適当に進んだところ、崖から落ちて死んでしまった。
ぶっちゃけ、理不尽な死に理由があればいいのと同じで、敵が近づいたときだけ方位がわかる理由があればいいのだ。だけど、それがないから、イライラさせられて、死んでしまった。これは理不尽だ。僕は怒りにまかせてコントローラーを投げた。まあ、すぐ拾ったけれど。放っておくと餓死するのには、納得したので。
■さやわか
ライター、評論家。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『朝日新聞』『ゲームラボ』などで連載。著書に『僕たちのゲーム史』『文学としてのドラゴンクエスト』など。漫画原作に『キューティーミューティー』がある。