中島健人が“相談したくなる”セラピストを体現 Netflixシリーズ『SとX』が切り拓いたもの

Netflixシリーズ『SとX』が切り拓いたもの

 ドラマの前半部分は、類型的ともいえる構成になっている。霜鳥の問題を示唆しながらも、1話完結形式で、それぞれに悩みを抱える患者を救っていくという内容だからだ。そしてその悩み自身も、相談者個人の内面に深くかかわるものであることで、現実の社会問題とのつながりは、やや弱いものとなっている。

 その意味で本シリーズは、ある種のミステリーや、人情ドラマとしての側面が前面に出ているといえる。同じく性の悩みを題材としていた、Netflixの先行シリーズ『セックス・エデュケーション』と比べると、性の問題における普遍性や切実さに欠けているところがあると思える。

 だが本シリーズを続けて観ていくと、盗撮問題や、女性アナウンサーなどへの性的なイメージをめぐる問題など、次第に日本の社会状況を下敷きにした要素が表れてくる。性の悩みはその人個人だけの問題でない場合があり、日本に根強くある性別間の不均衡が存在することもあるということが描かれはじめる。

 劇中終盤で、“下世話な内容で興味を喚起させる”という意味のセリフが飛び出す箇所では、本シリーズの内容をメタ的に、痛快なほど見事に暗示しているといえる。この、後半に行くにしたがって、日本の社会全体に大きな病巣があることが明らかになっていく趣向は、物語のスケールが拡大していくという意味でも、本シリーズにさまざまなスペクタクルをもたらしている。このあたりは、シリーズ構成も務めた脚本の吉田智子(『働きマン』、『君の膵臓をたべたい』)の功績が大きかったと推察できる部分だ。

 2019年から始まったイギリスのドラマ『セックス・エデュケーション』が、セックスセラピーという職業をすでにそれなりに確立したものとして描いていた一方で、日本ではそれが奇異なものとして偏見にさらされる状況もあることが、本シリーズでは描かれた。こうした点では、日本社会という土壌を持つ本シリーズは、アメリカやイギリスなどの国と比べると、性的な話題をことさら恥に結びつけずオープンにするという点で、遅れをとっているところはあるだろう。

 しかし、そうした状況を直視し、そこに横たわっている問題が明らかになることは、まだまだこの分野において過渡期といえる日本において、有用なことであることは間違いない。互いに気遣いをしながら、偏見を乗り越えてセックスの問題をそれぞれがより解決しやすい社会にしていくこと。その来るべき未来を、『SとX』は指し示しているといえるのだ。

■配信情報
Netflixシリーズ『SとX』
Netflixにて独占配信中
出演:中島健人、新木優子、三浦獠太、藤間爽子、中村蒼、久間田琳加、山口紗弥加、ユースケ・サンタマリア、佐野史郎
原作:多田基生『SとX 〜セラピスト霜鳥壱人の告白〜』(講談社『モーニング』刊)
監督:草野翔吾
シリーズ構成・脚本:吉田智子
脚本:草野翔吾、松島瑠璃子、ばばたくみ
撮影監督:山田康介
音楽:FUKUSHIGE MARI
Gaffer:西村昌幸
ミュージックスーパーバイザー:穐山仁美
VFXプロデューサー:進威志
エグゼクティブプロデューサー:岡野真紀子(Netflix)
プロデューサー:瀬戸麻理子、齋藤大輔
プロダクションプロデューサー:押田興将
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
企画・製作:Netflix

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