『ブルーロック』をガチのサッカー好きが正直レビュー 実写だからこそ伝わるプレーの凄み

『ブルーロック』サッカー好きが正直レビュー

 その象徴が、選手たちの“覚醒”の描かれ方だ。目つきが変わり、それまで見えていなかったものが見えるようになる。原作やアニメではおなじみの表現だが、生身の俳優が演じる実写では、一歩間違えれば周囲の映像から浮いてしまう。本作ではCGや光の表現を大胆に取り入れ、選手の頭の中で起きている変化まで視覚化していた。現実の試合で選手の目が光ることはないが、実はサッカーをプレーしているときも、無意識に状況を打開できたり、相手よりも一歩先が見えたりする瞬間はあるものだ。

 サッカーを観戦していても、“この選手、次は何か起こしそうだな”という瞬間はある。例えば、直近の「FIFAワールドカップ2026」チュニジア戦で2得点を挙げた上田綺世や、ブラジル戦で先制点を決めた佐野海舟には、ゴールが生まれる前からそんな雰囲気があった。試合の流れや選手の状態が噛み合った瞬間に、それまでとは違うプレーが飛び出し、一人の選手が局面を大きく動かす。『ブルーロック』の“覚醒”は、それを目や光といった分かりやすい表現にまで誇張しているとも言える。現実には目に見えない選手の感覚を可視化するからこそ、漫画的な演出でありながら、サッカーを知る人にもどこか理解できるものになっている。

 千切を演じた高橋恭平(なにわ男子)のスピード表現も、同じように『ブルーロック』らしい誇張が効いていた。サッカーにおける速さは、単純な走力だけではなく、ボールを運びながら加速し、一瞬で相手の前へ出ること、さらにスピードに乗った状態でもボールをコントロールできることが求められるが、千切がギアを上げてピッチを駆け抜ける場面では、カメラワークやCG、音響によって加速感が強調されていてかなり臨場感があった。そうした現実にもある感覚をベースにしながら、映像によって増幅することで、千切の“武器”を分かりやすく見せていた。

 そして、個人的にMVPを挙げるなら、凪誠士郎役のK(&TEAM)だ。原作でも凪が好きだったこともあり、実写化で特に気になっていたキャラクターでもあった。凪の魅力は、気だるさと天才性が同居しているところにある。普段は何事にも興味がなさそうなのに、ボールが足元へ来た瞬間、とんでもないプレーを平然とやってのける。その落差を実写でどう表現するのかには注目していたが、仕上がりは想像以上だった。

 まず目を引くのはビジュアルの再現度だが、それ以上に凪らしさを感じたのが、ボールを受ける前後の身体の使い方だ。凪は難しいボールでも力まずに収め、そのまま次のプレーに移っていく巧さが光っているが、Kはトラップに入る際の重心の落とし方や、ボールを受けたあとに身体を次の方向へ向ける動きがかなりスムーズだった。

 普段から&TEAMのメンバーとしてダンスやパフォーマンスを重ねていることも、こうした身体表現につながっているのだろう。軸を保ったまま身体の向きを変える動きや、力を入れる瞬間と抜く瞬間の切り替えにも滑らかさがあったし、その身のこなしが、凪の天才性とうまく噛み合っていた。潔との出会いをきっかけに、それまで無関心だった凪の表情や反応が少しずつ変わっていく芝居も含め、キャラクターの再現度はかなり高かった。

 実際のサッカーとは異なる部分が多少あっても、プレーする人間の身体や感覚にリアリティがあるからこそ、実写版『ブルーロック』の試合には説得力が生まれているのだろう。原作やアニメで描かれてきたサッカーが、生身の俳優によってどう表現されたのか。ぜひスクリーンで確かめてほしい。

■公開情報
『ブルーロック』
全国公開中
出演:高橋文哉、櫻井海音、高橋恭平、綱啓永、野村康太、K(&TEAM)、青木柚、西垣匠、富本惣昭、倉悠貴、東啓介、畑芽育、窪田正孝
監督:瀧悠輔
脚本:鎌田哲生
原作:金城宗幸・ノ村優介『ブルーロック』(講談社『週刊少年マガジン』連載)
主題歌:Ado「モンストロ」(Capitol Records/ユニバーサル ミュージック)
制作:CREDEUS
製作:CK WORKS
配給:東宝
©金城宗幸・ノ村優介/講談社 ©CK WORKS
公式サイト:BLUELOCK-MOVIE.JP
公式X(旧Twitter):BLUELOCK_MOVIE

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