美山加恋が『風、薫る』で見せる“母”の顔 『純情きらり』『虎に翼』から深まり続ける表現力

美山加恋が『風、薫る』で見せる“母”の顔

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第19週では、新潟の村で赤痢が発生。助けを求める長太郎(渋谷そらじ)の家で見つかったのは、布団の上で苦しむ母・アサ。演じているのは美山加恋だ。『僕と彼女と彼女の生きる道』(カンテレ・フジテレビ系)の“凛ちゃん”を知る身としては、彼女がNHK連続テレビ小説で母親役を演じる姿に、どうしたって時の流れを感じずにはいられない。

 美山にとって朝ドラ出演は、『純情きらり』(2006年度前期)、『虎に翼』(2024年度前期)に続く3作目。その原点となった『純情きらり』では、宮﨑あおい演じるヒロイン・有森桜子の少女時代を担当した。第1話から、八丁味噌の蔵元でかくれんぼをしているうちに味噌樽へ落下。おかっぱ頭を味噌まみれにしながら、物語の幕開けを鮮烈に飾っている。

 美山が演じた8歳の桜子は、とにかくよく動く。興味を持ったものへ一直線に駆け出し、大人に叱られても簡単にはへこたれない。一方で、亡き母の形見であるオルガンを前にすると、表情からすっと幼さが抜ける。明るくて、お転婆で、それでも母の不在を抱えている。美山は短い登場時間の中で、その後を演じる宮﨑へとつながる桜子の原点を、確かに作り上げていた。

 もっとも、その2年前には『僕と彼女と彼女の生きる道』で一躍脚光を浴びている。草彅剛演じる父・徹朗の顔色をうかがいながら、反射的に「はい」と返事をする小柳凛。感情を大きく表に出すのではなく、我慢する子どもの息苦しさを、小さな声や視線の揺れで伝えた。対して『純情きらり』の桜子は、家の中にも町にも飛び出していく少女である。内側へ感情を閉じ込める凛と、外へ向かって突き進む桜子。子役時代から、まったく異なるベクトルの役を自然に成立させていたことに驚かされる。

 その後も、美山は“かつての人気子役”という枠に収まらなかった。『砂時計』(TBS系)では、両親の離婚に傷つきながら新しい土地で生きるヒロインの少女時代を繊細に演じ、『ラーメン大好き小泉さん』(フジテレビ系)では、小泉さんに猛烈な勢いで迫る大澤悠としてコメディに振り切った。悲しみを抱えた少女から、顔芸も辞さないにぎやかな役まで。成長にあわせて役柄を広げるのではなく、作品ごとに自分の見え方を大胆に変えてきた俳優である。

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