美山加恋が『風、薫る』で見せる“母”の顔 『純情きらり』『虎に翼』から深まり続ける表現力

美山加恋が『風、薫る』で見せる“母”の顔

 さらに美山のキャリアを語るうえで外せないのが、声優としての活動だ。劇場アニメ『ももへの手紙』では主人公・ももの声を担当し、『エンドライド』を経て、『キラキラ☆プリキュアアラモード』では宇佐美いちか/キュアホイップ役に抜擢された。自身も初代『ふたりはプリキュア』を観て育った世代。声優経験がまだ浅い中で「プリキュア」という高い壁に挑み、いちかの弾けるような明るさと、誰かを元気にしたいというまっすぐさを、声だけで1年間届け続けた。

 美山は映像やアニメだけでなく、舞台でもキャリアを重ねてきた。ミュージカル『ピーター・パン』ではウェンディを演じ、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』では嘆きのマートルを担当している。表情や視線で細かな感情を伝える映像、声だけで人物を表現するアニメ、全身を使って客席へ思いを届ける舞台。それぞれで求められる演技は異なるが、美山は活動の場を行き来しながら表現の幅を広げてきた。一つのイメージにとどまらず、作品ごとに違った顔を見せてきたことが、彼女の俳優としての強みと言えるだろう。

 『純情きらり』から18年後に出演した『虎に翼』では、不貞行為を理由に夫から離婚を求められた瞳を演じた。寅子(伊藤沙莉)に「女の味方ではないのか」と迫り、理屈では抑えきれない怒りを爆発させる姿に、味噌樽へ落ちた桜子の面影はない。かわいらしさや懐かしさに頼ることなく、身勝手さも痛々しさも抱えた大人の女性として、短い出演ながら強烈な爪痕を残した。

 そして『風、薫る』では、赤痢に倒れた母・アサを演じている。りんたちが駆けつけたときにはすでに衰弱しており、自らの思いを多くの言葉で語れる状態ではない。それでも美山は、浅い呼吸や丸めた背中、力の入らないまなざしによって、病状の深刻さを伝えている。布団に横たわる姿からは、死への恐怖だけでなく、幼い長太郎を残してはいけないという母の思いもにじんでいた。台詞に頼らず、表情やしぐさから人物の感情を浮かび上がらせる力は、子役時代から変わらない美山の強みである。

 少女時代のヒロインから、不貞に走った妻、そして赤痢に苦しむ母へ。『風、薫る』は、そんな美山の成長と現在地をあらためて目にすることができる貴重な機会だ。アサの行く末とあわせて、美山が見せる芝居を最後まで見届けたい。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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