宮澤エマが作品に与える安心感 『マイ・フィクション』で示す“求め続けられる俳優”の技量

宮澤エマが作品に与える“安心感”

 過去にはNHK連続テレビ小説に2度出演し、それぞれ異なる時代を生きる女性を確かな存在感で立ち上げてきた。作品のトーンに寄り添いながら、物語の基盤を支える実在感と、登場人物の内に秘めた芯の強さを描き出す。それこそが、宮澤の芝居が持つ最大の魅力のように思う。

 直近の4月期に民放ドラマ初主演を務めた『産まない女はダメですか? DINKsのトツキトオカ』(テレ東系)で演じた金沢アサも印象的だった。「絶対に子どもを持たない」と誓い、DINKs生活を送ってきたアサは、夫の裏切りによって予期せぬ妊娠を強制されてしまう。夫への嫌悪感、そして体内に宿った命に対する複雑な思いと覚悟。宮澤は、葛藤を抱えた等身大の女性の姿を、リアルな痛みと体温を伴って描き出した。

 こうした役柄を振り返ると、彼女が作品に求められ続ける理由が見えてくる。宮澤エマがそこに立ち、言葉を発した瞬間に、フィクションの中に日常のリアリティが漂い始める。彼女の芝居を見ていると、どれほど奇想天外な物語であっても、不思議と「本当にこんな世界があるのかもしれない」と思わされてしまうのだ。

 宮澤は元々、ミュージカルでキャリアを重ねてきた俳優である。『ラ・マンチャの男』や『ジキル&ハイド』など、名作と呼ばれる数々のミュージカルで培った発声や身体の使い方を持ち合わせながら、映像ではそれを前面に押し出さない。視線や呼吸、わずかな間へと表現を凝縮させ、画面の中に自然な生活者として立つ。その調整力もまた、彼女が多様な作品で求められる理由だろう。

 かつてインタビューで「舞台と映像、どちらも経験することで、さらにいい演技ができるようになればいい」(※)と語っていた宮澤。この言葉のとおり、彼女は双方のフィールドを往還しながら自身の芝居をアップデートし続けてきた。

 『マイ・フィクション』第2話のラストでは、伊川が自宅へと戻り、第1話の冒頭のような通常の日常が戻ってきた様子が描かれた。この、一見すると元通りになった平穏こそが、物語の不穏さをより引き立てている。そもそも、事件件数ゼロを誇る「森沼ネクスタウン」自体が、どこか奇妙な雰囲気を醸し出している街だ。やはりここが今後の展開の舞台となっていくのだろう。そして、その中心にいるのが伊川夫婦である。現時点では、真弓という存在そのものはまだクローズアップされていないが、今後、彼女が重要な役割を担うことは想像にかたくない。

 愛鳥ピョートルを見つめる優しい眼差し、食卓を囲む何気ない仕草。それらのディテールに生活の息遣いを宿らせる宮澤の芝居は、不穏なこの街に、皮肉にも「ここには確かな生がある」という実感を刻みつける。フィクションを本物へと仕立て上げる彼女が、真相が明かされていく中でどのような変化を見せてくれるのか、今後の展開に期待が高まるばかりだ。

参照
https://realsound.jp/movie/2024/07/post-1733014.html

■放送情報
『マイ・フィクション』
ABCテレビ・テレビ朝日系にて、毎週日曜22:15~放送
出演:玉森裕太、森川葵、宮澤エマ、ジャンボたかお(レインボー)、結城萌、三浦獠太、国仲涼子、佐戸井けん太、野村周平
脚本:山岡潤平
演出:有働佳史、松嵜由衣、宮岡太郎
チーフプロデューサー:辻知奈美
プロデューサー:藤田洋平、小森千裕(ABCテレビ)、山本喜彦、森一季(MMJ)
制作協力:MMJ
制作著作:ABCテレビ
©ABCテレビ
公式サイト:https://www.asahi.co.jp/myfiction/
公式X(旧Twitter):@drama_myfiction
公式Instagram:@drama_myfiction
公式LINEアカウント:@abc_drama

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