『銀河の一票』の結末に“居心地の悪さ”? “悪人がいない”物語はどこまで有効か

『銀河の一票』の結末に“居心地の悪さ”?

 一方、『銀河の一票』は政治の世界の内幕や、生活に困っている人々の声が、とてもリアルで現代的な問題を扱っているが、悪人を描かないという性善説がとられていた。

 そのため、すごくリアルでありながら「こうあってほしい」という理想としての政治を描いているように感じた。

『銀河の一票』©︎カンテレ

 本作のプロデューサー・佐野亜裕美は、2022年に『エルピス ―希望、あるいは災いー』(カンテレ・フジテレビ系)というドラマを手掛けている。本作はある冤罪事件の追跡調査をおこなう中で、事件の背後にある国家権力の闇と向き合うことなるテレビ関係者の話だった。つまりテレビ関係者の視点から描いた政治ドラマだったと言えるが、今振り返ると『銀河の一票』とは真逆のアプローチで作られていた。

 佐野は『エルピス』のシナリオブック(河出書房新社、著者・渡辺あや)の巻末に収録された「特別対談 渡辺あや×佐野亜裕美 『エルピス』ができるまで、あるいは二人の奮闘記」の中で、冤罪はひとりの悪人とか権力者によって生み出されるものではなくて、「むしろ、だれも「悪」ではない、という点が重要なんです」と語っている。

 そして、本作では冤罪を生み出す構造とは別に、『エルピス』では権力が犯す罪を描いているが「大門副総理という象徴的な人物がいるがゆえに、陰謀論の話としてだけで捉えられてしまう可能性があると思うんです」と自ら問題点を指摘する。そう見えないように工夫はしたと佐野は語るが、「企画を立ち上げた者としましては、まだできることがあったんじゃないかという反省があります」と語っている。

 この反省は、『銀河の一票』に活かされている。 

『銀河の一票』©︎カンテレ

 日山流星、星野鷹臣、政策秘書の雫石誠(山口馬木也)といった、チームあかりと敵対することになる与党の政治家や秘書たちは絶対的な悪として描かれておらず、陰謀論的な語りからは逃れている。

 だが、悪人はいないという描き方を選んだ結果、当初存在した物語上の対立軸が見えなくなり、最終的に自己と他者の境界が曖昧な日本の村社会的な慣れ合いとしての側面が強くなってしまったように感じた。

『銀河の一票』©︎カンテレ

 最終的に都知事選は日山流星が勝利し、チームあかりの茉莉、あかり、五十嵐隼人(岩谷健司)、雲井蛍(シシド・カフカ)が副知事として迎えられることになる。

 筆者はこの結末に居心地の悪さを感じた。

 客観的に考えれば、与党の推薦を受けており、政治家としての知名度が高い日山流星が勝つのは当然なので、リアルな落とし所ではあるのだが、「これでは敵陣営に取り込まれただけではないか?」「月岡あかりに投票した人たちは本当に納得できるのだろうか?」と考えこんでしまうと同時に、「チームあかりがやりたかった都政が本当にできるのだろうか?」と心配になる。
 
 絵空事になっても構わないので、敵陣営との対話をしっかりと描くことで主張の違いを明確にし、その上でチームあかりが勝利する場をちゃんと観たかったというのが、正直な気持ちである。

■配信情報
『銀河の一票』
TVer、FOD、Netflixにて配信中
出演:黒木華、野呂佳代、三浦透子、渡邊圭祐、倉悠貴、小雪、本上まなみ、シシド・カフカ、岩谷健司、山口馬木也、木野花、岩松了、坂東彌十郎、松下洸平ほか
脚本:蛭田直美
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧悠輔、稲留武
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
音楽:坂東祐大
主題歌:浜野謙太(在日ファンク)&後藤真希 feat. 黒木華&野呂佳代「おーへい」(日本コロムビア)
制作協力:AOI Pro.
制作著作:カンテレ、MYRIAGON STUDIO
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ginganoippyou/
公式X(旧Twitter):https://x.com/gingaippyou
公式Instagram:https://www.instagram.com/gingaippyou/
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