有村架純、終わりのない挑戦としての“俳優業の美学” 「結局自分を救ってくれるのはお芝居」

“金の密輸”に手を染めることになった3人の女性たちの姿を描いた映画『マジカル・シークレット・ツアー』で主演を務めた有村架純。2人の子どもを育てる主人公・和歌子役で、本格的な母親役に初挑戦している。作品の重要なピースとなるシンガポールでのロケを経験した彼女は、「お芝居に満足したことは一度もない」とストイックに語る。初共演となった黒木華、南沙良との特別なセッションから、自身の人生の転機となった現場、そして「潜り続ける」と表現する独自の俳優哲学まで、じっくりと話を聞いた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
“最初は不安だった”母親としての佇まいの説得力
ーー本作はシリアスなテーマを扱いながらも、どこかクスッと笑えるエンターテインメント作品に仕上がっている印象を受けました。有村さんが最初にこの作品に惹かれた理由を教えてください。
有村架純(以下、有村):お話をいただいたとき、女性3人が織りなす、ある種の“大人の青春ストーリー”だと感じました。台本の段階から、どこかシリアスな中にも不思議な“疾走感”があって、それがこの作品をとても魅力的に思った最初のきっかけです。「金の密輸」という、本来はやってはいけない犯罪を描くからこそ、彼女たちがそこに突き動かされていく背景をきちんと表現できれば、観る人に納得してもらえる、説得力のあるものになるんじゃないかなと思って挑戦を決めました。
ーー今回、有村さんにとっては初の「本格的な母親役」への挑戦となりました。演じる上で意識したことはありましたか?
有村:私自身は子育ての経験がないので、母親としての佇まいにどうやって説得力を持たせるか、最初はすごく不安でした。自分の中にない経験を補うには、とにかく他の方の経験談を自分ごとにしていくしかありません。なので、YouTubeなどで発信されている「兄弟がいる家庭の育児ルーティン動画」をたくさん見て勉強しました。
ーー動画からはどのような気づきがありましたか?
有村:暮らしの中の細かな習慣や生活の工夫を知ることができました。それと同時に、お母さんって常に頭の後ろにも目がついているんじゃないかっていうくらい、あらゆることに気を配りながら生きているんだなと痛感しました。普段の私は自分のことだけを考えて生きていますけど、母親はそうではない。その「常に子供に意識が向いている状態」を、お芝居の中でどう自然に見せるかという部分は、自分にとって大きなチャレンジでした。
ーー清恵役の黒木華さん、麻由役の南沙良さんとは今回が初共演となりました。三者三様の魅力が画面から溢れていましたが、お二人との撮影を振り返っていかがですか?
有村:お二人の出演されている作品はたくさん拝見していましたし、すでに独自のオリジナリティを確立されている素晴らしい役者さんです。だからこそ、一緒にお芝居をする上での怖さもありました。自分がそこにちゃんと応えられるだろうか、というプレッシャーですね。でも、いざ現場で並んで立ってみると、お二人とも本当に柔軟で、思いやりに溢れていて。自分さえ良ければいいというスタイルではなく、スタッフの皆さんと一緒に、みんなで作品を作っていこうという意識を強く持たれている素敵な方々でした。お二人がそんなふうに支えてくださったからこそ、私は安心して真ん中に立つことができたんだなと、今振り返っても感謝しかありません。
ーー現場でお芝居について熱くディスカッションをされるような場面もあったのでしょうか。
有村:お芝居の方向性について、言葉で熱く語り合うようなことはしませんでした。ただ、物語の後半に向けて3人のテンションをどんどん高揚させていかなければならなかったので、「ここはもうちょっとこれくらい(の熱量)がいいかな」とか、「こういう動きをしたらそう見えるよね」といった細かなニュアンスの確認は、自然と話し合っていましたね。
ーー本作の大きな見どころの一つが、シンガポールでのロケシーンです。海外での撮影現場の空気感はいかがでしたか?
有村:私は海外での撮影が、『アイアムアヒーロー』での韓国、『さよならのつづき』でのニュージーランドに続いて、今回が3回目でした。今回のシンガポールの現場でも強く感じたのですが、海外の現地クルーの皆さんは、まるで「自分の国で上映されるメインの作品」であるかのように、本当に熱心に、高い熱量で取り組んでくださるんです。そういう熱い人たちに出会える機会に恵まれているなと思いますし、彼らの姿勢にはものすごく感激しました。
ーー1週間ほどの滞在だったそうですが、撮影の合間にプライベートな時間はありましたか?
有村:ゆっくり観光をする時間はさすがになかったのですが、何日かは夜ご飯を食べに行く時間がありました。黒木さんや南さん、それにスタッフの皆さんと一緒に、現地の野外フードコート(ホーカーセンター)へ行っていろんな料理を食べたり、チリクラブを囲んだりしたのはすごく良い思い出です。
ーー映画を観ても、近代的な大都市のすぐ隣に豊かな自然が共存しているシンガポールの多国籍な魅力が、そのまま作品の不思議なトーンに繋がっていると感じました。
有村:そうですね。撮影している間、監督は「いろんなパターンの和歌子が見たい」とおっしゃって、ワンカットにつきお芝居のニュアンスを変えて何パターンも撮っていたんです。なので、実際に完成するまでどのテイクが使われるか分からなかったのですが、繋がった映画を観たら、すごく軽やかで観やすい仕上がりになっていて。クスッと笑えるし、カルチャーに寄りすぎず、エンタメにも寄りすぎず、絶妙に“優しい香りのする作品”になっていました。また新しいジャンルの映画が出来上がったんじゃないかなと、私自身もワクワクしています。





















