朝ドラヒロインを強くする“仲間との別れ” 『風、薫る』『虎に翼』が描く夢のバトン

例えば、桜川侑次郎男爵の一人娘・涼子は、高等試験の直前に父・侑次郎(中村育二)が失踪したので桜川家の存続を第一に考えねばならず、家を継ぐために結婚を決意。法の道を諦めるしかなかった。香淑は朝鮮半島に帰らなければならず、梅子は夫で弁護士の徹男(飯田基祐)から離婚届を差し出され、試験会場に行くことができなかった事情がある。
修習期間を無事に終え、弁護士資格を取得した寅子でさえ、未婚の女性には依頼が全く来ない。来ても最終的には断られ、やる気だけが空回りしてしまう。そんな中、優三(仲野太賀)と結婚したことでようやく弁護士としても認められるようになったが、仕事も結婚生活も順調で、今度は出産となると子育てに専念すべきだと周囲の強い説得を受ける。初めての出産、体調もすぐれない状態で、弁護士事務所を辞めざるを得なかった。
弁護士とトレインドナース、職業は違うけれど、男性が収入を得るために学ぶように、女性も専門的な知識を得て仕事をするためには前例がなかった時代の物語。本作の、りんや直美は、梅岡看護婦養成所の1期生で、『虎に翼』の寅子やよね、涼子たちは明律大学女子部の2期生で、男子に冷やかされたり、親に反対されたりと誤解や批判を受けがちで、だからこそ仲間の連帯感が強くなっていくのかもしれない。

今回、ゆきは自身で看護の道は困難だと判断し、看護学校を去る決断をした。これまでそれぞれ主張し合って、時に意見がぶつかることがあった1期生だが、自分なりの答えを探したゆきを見る目は優しく、一体感も生まれているようだ。お揃いの紺色の実習服というのも、これまでになかった新しい看護という職業の技術を身につける上で重要な役割を担ったようにも思える。
まだ実習の途中で、りんも直美も看護とは何か、その明確な答えを自分の中に持っているわけではない。ただ、ゆきの決断に至るまでの過程を知り、自分には何ができたのか、自分がゆきの立場だったらどうしていたか、考えずにはいられないだろう。
自分にも患者にも誠実であろうと真摯に向き合ったゆきに対して、夢を夢で終わらせないために現実に立ち向かう強さをりんや直美たちは身につけていくしかない。『虎に翼』のヒロイン、寅子も仲間との絆を深め強くなっていったように。
りんと直美も、見習いの仲間や看病婦の先輩たちとさらに信頼関係を築き、経験を積んだ先に、また違う景色が見えるのかもしれない。りんと直美が最強のバディとなるのは、もう少し先のことだ。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK





















