『銀河の一票』アベンジャーズ作戦が発動 シシド・カフカの情熱を呼び覚ました名曲とは?

『銀河の一票』アベンジャーズ作戦が発動

 『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)第5話では、都知事選の大本命・日山流星(松下洸平)の“物語”が明かされた。

 当選請負人の“テンサウザンド”こと五十嵐(岩谷健司)が加わり、銭湯に選挙事務所を構えたあかり(野呂佳代)と茉莉(黒木華)。次なる段階として、リベンジを誓う者たちが結集する。その名も「アベンジャーズ作戦」で加わったのは、闘志を秘めた元市長だった。

 都議選の大本命が民政党所属、現職国会議員の流星だ。流星については、これまで徹底してうさん臭い、薄っぺらいイメージが強調されてきた。第5話を観ると、その印象が少し変わる。民政党幹事長で茉莉の父の鷹臣(坂東彌十郎)に拾われ、育てられた経歴はよくできたストーリーではなく「完全にノンフィクション」。父親の工場が倒産し、母親は家を出て行った。一家心中から逃れて、困っていたときに出会ったのが若き日の鷹臣だった。

 ちょうど若くして政治の世界で頭角を現した知事の経歴を読んだところだったので、流星の生い立ちはすんなりと入ってきた。流星は苦労人である。何も持たないところから、自分を磨き上げ、生き抜いてきたことは称賛されるべきだ。おもしろいのは、流星らしさは子どもの頃からあること。計算高く、状況を俯瞰する態度はすでに見られた。逆にそれが、彼を今日ある地位まで押し上げてきたのかもしれない。

 選挙のとき、私たちは政治家の何を見ているのだろうか? 昨今の選挙は大衆の胸を打つ物語によって結果が大きく左右される。流星は、自身の生い立ちを物語として背負い、それを繰り返しリピートする。その中には一分の真実があり、メディアを通して加工され、強調されて巷に流布する。予定調和と断じることはできない。現実に力を持っているからだ。

 選挙戦に戻ると、民政党の公認と公民党の推薦を取り付けた流星は、この時点ですでに200万票を獲得。よほどのことがないかぎり勝利は確実だ。対するあかりはゼロに等しい。どう考えても無理ゲーなのだが、五十嵐には秘策があった。

 前回都知事選で、現職の最大のライバルと目されていた候補が失速した裏に、次点に食い込む新鋭の大躍進があった。ダークホースの存在は野党票を分割する効果があったと言われる。五十嵐が提案したのはその逆で、本命の票を割る狙いだ。一枚岩に見える民政党だが、独自の力学で動く都連には反流星派がいるはず。それを突き止める間に、茉莉たちはアベンジャーズ作戦に着手する。

 目には目を、歯には歯を、ナラティブにはナラティブを。政治家の品評会でもある選挙で、ぽっと出のスナックのママであるあかりがどんなに健闘しても、本命にはかなわない。だからアベンジャーズ。副知事候補を集めて、個々の魅力で立ち向かう。茉莉と五十嵐、それぞれにストーリーがある。アベンジャーズは、異なる物語を持ち寄ることで、選挙というユニバースの覇権を握る作戦だ。そこに欠かせない人物が、元西多摩市長の雲井螢(シシド・カフカ)だった。

 前置きが長くなった。ドラマとしておもしろいのは、茉莉たちが雲井を口説きに行く一連のシーンなので、ぜひ本編をご覧いただきたいのだが、螢の挫折と彼女が背負う物語の厚みと本気ぶりに圧倒された。生きた政策、切れば血が流れるような言葉の応酬。もちろん流星が駄目なわけじゃないのだが、苦労はその人次第なのだと感じさせるすごみがあった。螢の口をついて出る「ぶっ飛ばす」(「ぶっ壊す」みたいですね)は、単なる威勢のいい掛け声ではなくて、理不尽にあらがう螢の魂の叫びだった。

 大黒摩季の「あぁ」を聞いて、自分が何と戦おうとしていたかを螢は思い出した。螢の息子は、母が傷ついていることを感じ取り、台風の夜に怖くないよと伝える。まだまだ抱きしめてもらいたい年頃の子どもでも、親の背中をちゃんと見ていて、いざとなったら一緒に重荷を背負う覚悟がある。ちょうど幼い頃の茉莉がそうだったように。

 ちなみに、同曲は、大黒が曲作りに行き詰まっていたときに、同じスタジオにいたB’zの稲葉浩志と松本孝弘の姿に励まされたことにインスパイアされてできた曲というエピソードがある。時を超え、形を変えてナラティブの影響が伝播する一例でもあった。

 ドラマは選挙の前哨戦に入り、腹の探り合いが繰り広げられる。茉莉が雨宮(三浦透子)を切ったのは、情報が漏れることを恐れたからではないか。暴露系YouTuberの白樺(渡邉圭祐)は、流星の何かをかぎつけたのだろうか。昴(倉悠貴)が茉莉の動静を探ったことと、茉莉が雫石(山口馬木也)にトランクルームの解約を頼んだことは関係があるのか。情報戦の様相を呈する『銀河の一票』は、インテリジェンスの観点からも有益だ。

■放送情報
『銀河の一票』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:黒木華、野呂佳代、三浦透子、渡邊圭祐、倉悠貴、小雪、本上まなみ、シシド・カフカ、岩谷健司、山口馬木也、木野花、岩松了、坂東彌十郎、松下洸平ほか
脚本:蛭田直美
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧悠輔、稲留武
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
音楽:坂東祐大
主題歌:浜野謙太(在日ファンク)&後藤真希 feat. 黒木華&野呂佳代「おーへい」(日本コロムビア)
制作協力:AOI Pro.
制作著作:カンテレ、MYRIAGON STUDIO
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ginganoippyou/
公式X(旧Twitter):https://x.com/gingaippyou
公式Instagram:https://www.instagram.com/gingaippyou/
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