『名探偵コナン』沢城みゆきは“萩原千速”をどう継いだ? 田中敦子さんの魂を宿した表現

では、沢城は千速役をどんなふうに受け継いだのか。第一印象としては、かなり田中さんを意識した演技となっているように聞こえた。また、田中さんが築いてきた“強い女性”としての千速像を踏襲していることも確かだ。しかしそれだけでなく、まったく新たな一面を宿すことに成功していたようにも思われる。

というのも今作の千速は、7年前に殉職した弟・萩原研二やその親友だった松田陣平など、今は亡き人々に心を囚われ続けているような顔を見せる。その姿は今までにいないほど寂しげで、感傷的なセリフも随所に出てくる。つまり強さの裏に、ある種の弱さを背負った人物として描写されているのだ。
その印象をより強めているのが、沢城の演技だ。任務中のキリッとした声と、過去を思い出す際の繊細に揺れ動く声によって、千速の内面を上手く表現していた。

さらに注目すべきは、神奈川県警の警部・横溝重悟との掛け合い。横溝と千速は今のところただの同僚だが、この先恋愛に発展していきそうな関係性となっている。今作では2人の濃密なロマンスを感じさせるシーンも登場するのだが、そこで沢城は、自身の十八番とも言える“ツンデレ”的な演技を存分に披露していた。
なお念のため触れておくと、横溝に声を当てているのはベテラン声優の大塚明夫。そして大塚と田中さんといえば、言うまでもなく『攻殻機動隊』シリーズのバトーと素子の名コンビとして有名だ。そのため後任キャストを務める沢城に多大なプレッシャーがかかっていたことは、想像に難くない。

それにもかかわらず沢城は、重圧を一切感じさせない堂々とした演技によって、新たな千速の姿を表現している。大塚はそんな沢城の演技について、「元々は故田中敦子氏が演じた役ですが沢城みゆき氏が見事に演じてくれました」「敦子さんの弔いができた気がしてます」と称賛の言葉を贈っていた。(※)
ファンたちにほとんど違和感を与えないほど声と演技を合わせつつ、これまでにない一面を見事に表現した沢城。今作を通して、千速というキャラクターに新たな命が吹き込まれたようにも感じられる。劇場に行った際には、あらためて田中さんの演技を思い出しながら、千速のこれまでとこれからに想いを馳せてほしい。
参照
※ https://www.conan-movie.jp/2026/kazenotasuki
■公開情報
『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』
全国公開中
キャスト:高山みなみ(江戸川コナン役)、山崎和佳奈(毛利蘭役)、小山力也(毛利小五郎役)、沢城みゆき(萩原千速役)、三木眞一郎(萩原研二役)、神奈延年(松田陣平役)
スペシャルゲスト:横浜流星、畑芽育
原作:青山剛昌
監督:蓮井隆弘
脚本:大倉崇裕
音楽:菅野祐悟
主題歌:MISIA「ラストダンスあなたと」(Sony Music Labels Inc.)
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
製作:小学館/読売テレビ/日本テレビ/ShoPro/東宝/トムス・エンタテインメント
配給:東宝
©2026 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
























