有働由美子は『時すでにおスシ!?』で輝くか アナウンサー出身俳優から紐解く“成功の鍵”

アナウンサー出身俳優から紐解く成功の鍵

 ただ、その後に続く人はなかなか現れなかった。野際より20歳ほど下の元NHKの池田裕子(1957年生まれ)は退職した1986年、『金曜日には花を買って』(TBS系)に出演。異業種の人が俳優に挑戦したのが伝わる初々しい演技を披露し、その後は2時間ドラマなどに出演した。

 元フジテレビの山村美智(1956年生まれ)は『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)の“ひょうきんアナウンサー”などで知られたユニークな存在だったが、1985年に退社し、フリーアナを務めた後、俳優に転身した。大河ドラマ『功名が辻』(2006年/NHK)などにも出演し、俳優としても認められた存在といえよう。

 そこからまた10年ほど下って、元フジテレビの八木亜希子(1965年生まれ)が2000年に退社後、2001年に映画『みんなのいえ』に出演。最初はあまり演技が上手でないと評されていたが、次第に俳優として馴染み、近年も『南くんが恋人!?』(2024年/テレビ朝日系) 、『アンサンブル』(2025年/日本テレビ系)などに出演している。

 そして、野際に次いで俳優として確たる地位を確立したのが元TBSの田中みな実(1986年生まれ)だ。2014年に退社後、2020年にドラマ『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)で演じた眼帯姿の秘書役で、恋のライバルであるアユ(安斉かれん)の前に立ちはだかっては、「許さなーーーーい」と、ありえない長さの音引きで脅すシーンが話題を呼んだ。

 それだけ見ればイロモノ担当に見えなくもないが、彼女の場合、それ以前の実質的な俳優デビュー作『絶対正義』(2019年/東海テレビ・フジテレビ系)の時点で、既に演技の巧さを発揮していた。美村里江、片瀬那奈、桜井ユキといった実力者たちに混じってそつなく役をこなし、筆者などは最初、田中だと気づかなかったほどだ。

 つまり最初から異業種の人が演技に挑戦している素人っぽさがなく、安定感があったところが、野際と共通していた。だからこそ『M 愛すべき人がいて』でも、中途半端に演じたら成立しない役を任されたのだろう。パブリックイメージに重なる「あざとくて闇が深い」役を当てられることもあるが、近年ではむしろサバサバした男っぽい役も多く、よく似合っている。今では作品にスパイスを加える連ドラに欠かせない存在になっているといえよう。

 その後は元TBSの宇垣美里(1991年生まれ)や元テレビ東京の森香澄(1995年生まれ)が俳優に挑戦。宇垣は2019年に退社、2021年より俳優活動を開始し、2025年には『できても、できなくても』(テレ東系)に主演。森は2023年に退社、2025年には『年下童貞くんに翻弄されてます』(MBS)に主演している。

 両者とも局アナ時代から個性がはっきりしており、テレビ局としては第2の田中みな実を期待している面が強いだろう。近年はアナウンサーのフリー転身も当たり前で、最初から俳優やタレントになることを見込んでの就職ではないかと感じられなくもない。

 だが高島彩(1979年生まれ、『下町ロケット』(2015年/TBS系)に出演)や平井理央(1982年生まれ、『ルーズヴェルト・ゲーム』(2014年/TBS系))、加藤綾子(1985年生まれ、『ブラックペアン』(2018年/TBS系))らがドラマに出演しても一過性に終わり、継続的に俳優に専念できるケースは極めて少ない。

 それはやはり、アナウンサーと俳優では資質が違うからではないだろうか。アナウンサーは言葉で伝え続けるのが仕事なのに対し、俳優はしゃべらずに、黙って表情やたたずまいで伝える場面も重要だったりする。そしてアナウンサーはおおむね無個性を求められるのに対し、俳優は個性が求められる。だから最初から個性が際立っていて、アナウンサーの枠に収まりきらないような人たちが俳優に転身するのだが、それでも成功する人は少ない。

 有働の場合は個性が際立ってはいたが、やはり言葉で伝えるタイプの人だと思うし、恐らく本人も本格的に俳優をやっていこうと思ってもいないだろう。彼女自身、「永作博美さんの親友役というのは、願ってもできるものではない。その機会をいただけるなら、恥をかいても何を言われてもいいと思い、出演を決めました」と記念出演的なコメントを発している(※)。

 そもそも他のメンバーの多くは20代後半で挑戦しており、有働のように50代になって俳優に転身したアナウンサーは過去にいない。だがもし参考にするなら阿川佐和子(1953年生まれ)が挙げられるだろう。局アナではないが長年司会者として活躍し、2017年の『陸王』(TBS系)で連ドラにレギュラー出演。近年も『小さい頃は、神様がいて』(2025年/フジテレビ系)や『お別れホスピタル2』(2026年/NHK)などに出演している。自身の人生で積み重ねてきたものが、いい“味”となって演技に表れるケースもあるのだ。有働がそういうタイプの表現者になるのかどうかは、もう少し様子を見てみたい。

参照
https://realsound.jp/movie/2026/04/post-2366361.html

■放送情報
火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:永作博美、松山ケンイチ、ファーストサマーウイカ、中沢元紀、山時聡真、杏花、平井まさあき(男性ブランコ)、後藤淳平(ジャルジャル)、猫背椿、関根勤、有働由美子、佐野史郎
監督:坪井敏雄、岡本伸吾、金子文紀
脚本:兵藤るり
編成プロデュース:松本友香
プロデュース:益田千愛、鈴木早苗
主題歌:Creepy Nuts「Fright」(Sony Music Labels Inc.)
音楽:青木沙也果
製作著作:TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tokisushi_tbs/
公式X(旧Twitter):@tokisushi_tbs
公式Instagram:tokisushi_tbs
公式TikTok:@tokisushi_tbs

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