宇野維正の映画興行分析
『名探偵コナン』新作の公開を控えて 他作品は紅白の裏番組状態に

4月第1週の動員ランキングは、トップ10に新作のランクインなし。これは、翌週の4月10日に『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』の公開を控えて、シネコンのほとんどのスクリーンを奪われてしまうこの時期の公開を有力作が避けた影響もあるだろう。そういう意味では、今年のアカデミー賞で8部門にノミネート、主演のジェシー・バックリーが主演女優賞を受賞した4月10日公開のクロエ・ジャオ監督の新作『ハムネット』は、『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』と正面からぶつかるわけだが、北米では5ヶ月前に公開された同作を、どうしてこの日程で公開することにしたのか疑問が残る。観客層はほとんど重ならないかもしれないが、一部シネコンでは公開初日から早朝の回や夜遅くの回に追いやられてしまっているのだ。
先週末はトップ10に新作のランクインがないだけでなく、下位からの入れ替わりもない珍しいランキングとなったが、結果的にトップ10の中でランクアップした作品とランクダウンした作品とで、勢いが残っている作品とそうではない作品の差が明確に表れることとなった。ランクアップしたのは前週4位から1ランクアップした『プロジェクト・ヘイル・メアリー』、前週10位から5ランクアップした『超かぐや姫!』、7位から1ランクアップした『ウィキッド 永遠の約束』の3作品。Netflixで配信公開された作品でありながら、今週末にも興収20億円超えが確実な『超かぐや姫!』はあまりにも特異な興行となっているが、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』と『ウィキッド 永遠の約束』の興行は、初動に偏りやすいメジャースタジオの実写洋画でも作品によっては粘りのある興行が可能なことを示している。
だからこそ、100億円前後の最終興収が予想される『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』のような作品と公開日が重なることで、初週の上映回数が少なくなり、「初動型」になる機会すら失われてしまうというのは致命的だ。近年、『コナン』の新作や『鬼滅の刃』の新作が公開される度に話題にされてきたシネコンの極端な寡占状態だが、もうそれを映画ファン、特に実写洋画のファンがソーシャルメディアで嘆いてみせる様子にもうんざりしている人も多いのではないか。特にメジャースタジオの実写洋画に関しては、画一的な全国公開のシステムそのものを見直す段階に入っているように思う。
結果的に興収100億円を超える作品が年間数本出ることはあっても、『コナン』のように公開前からそれが確実視されている作品は実は1本か2本程度しかない。世界同時公開などの本国からの指示もなく、その作品に公開がぶつかった実写洋画には、避けられる事故を避けなかった理由、つまり配給サイドからも期待がされていない作品だと判断するしかない。
■公開情報
『ハムネット』
4月10日(金)全国公開
出演:ジェシー・バックリー、ポール・メスカル、ジョー・アルウィン、エミリー・ワトソン
監督:クロエ・ジャオ
脚本:マギー・オファーレル、クロエ・ジャオ
製作:スティーヴン・スピルバーグ、サム・メンデス
配給:パルコ、ユニバーサル映画
2025年/イギリス/ビスタサイズ/126分/カラー/英語/5.1ch/原題:Hamnet
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