北村有起哉、永瀬廉、伊藤英明、市川團十郎 『リブート』の“悪役”はなぜ魅力的だったのか

『リブート』の悪役はなぜ魅力的だったのか

 愛する家族を守るために、宿敵・合六亘(北村有起哉)の組織を自ら潰す決意をした早瀬陸(松山ケンイチ/鈴木亮平)。日曜劇場『リブート』(TBS系)が描いているのは「愛のためなら。」というテーマが貫かれた、ストレートな家族愛の物語だ。一方、その必死な奔走の裏側で、視聴者の心に強烈に刻まれているのは、実は彼らを追い詰める悪役たちの姿ではないだろうか。

 振り返ると、本作には実に多くの悪役が登場した。合六をはじめ、海江田勇(酒向芳)や菊池(塚地武雅)ら組織の利権を守る幹部たち。その下で実働部隊として動く冬橋航(永瀬廉)や霧矢直斗(藤澤涼架)。さらには、それらすべてを飲み込もうとする政治家・真北弥一(市川團十郎)まで。そもそも、早瀬がリブートした儀堂(鈴木亮平)自身が「悪徳警官」という設定であり、この物語は最初から最後まで、多層的な悪に塗り潰されている。そのバリエーションはまさに「悪の博覧会」と言っていいほど多様であり、それぞれのキャラクターが放つ底知れぬ魅力が、私たちを最後まで楽しませてくれた。

 本作の悪役たちが放つ最大の魅力は「リブート」という設定がもたらす、キャラクターの多層性にある。整形手術によって「別人」になりすますという仕掛けは、画面に映る人物の言葉や行動のすべてに、「これは演技か、それとも本心か?」という疑念を常に潜ませる。視聴者は物語を追う中で、絶えず「この悪役も、実は『善』の側にいるのではないか?」と、わずかな光を探し続けることを強いられるのだ。

 その象徴として視聴者の脳内を最後まで掻き回し続けたのが、監察官・真北正親(伊藤英明)だ。早瀬の前に現れるときに見せる不気味な笑みや、獲物を射抜くような鋭い眼光。さらには、真意を測らせない数々の意味深なセリフ。真北は最初から最後まで、善と悪の間で視聴者を翻弄し続けた。伊藤英明という俳優は、熱きヒーロー像を彷彿とさせる一方で、「悪意」を孕んでいるようにも見えるその眼差しが、観る者に強烈な不安を抱かせる。その俳優としての奥行きを最大限に生かし、「極悪人かもしれないし、救世主かもしれない」という期待と疑念を交互に突きつける脚本は見事というほかない。その不気味な存在感は、本作における「悪」のバリエーションに、奥行きと知的で冷徹な色気を与えていた。

 一方で、真北とはまた異なる「二面性」を体現したのが、冬橋航の存在だ。合六の冷徹な実行部隊として、感情の読めない表情で非情な任務を淡々とこなす。しかし物語が進むにつれ、彼が手を汚し続けていた理由が「身寄りのない子供たちの居場所を守るため」であったことが明かされる。悪に染まったかに見えた彼の裏側には、誰よりも純粋な「守る理由」があった。このねじれた二面性が、冬橋というキャラクターに、抗いがたい悲劇性と気高さを与えた。

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