『ストリート・キングダム』を観たら明日を生きたくなる 若葉竜也と味わう“あの頃”の青春

リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、“夢追い人”石井が『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』をプッシュします。
『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』

3月27日、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』が最終回を迎えました。今までない視聴者を取り込んだ『虎に翼』をはじめ、近年の朝ドラが“正しさ”をしっかりメッセージとして放っていた中で、『ばけばけ』は“正しさ”だけでは語れない人間の弱さと切なさとおかしさと愛おしさを描き続けた作品でした。
そんな『ばけばけ』でも感じた、ときに“正しさ”だけでは生きていけない人物も肯定してくれる映画が、3月27日から公開された映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』です。
本作の舞台は1978年。セックス・ピストルズの解散を機に、日本のアンダーグラウンドで「東京ロッカーズ」と呼ばれるパンクムーヴメントが産声を上げた時代です。写真家になる夢に破れた青年・ユーイチ(峯田和伸)は、圧倒的なカリスマ性を持つバンド「TOKAGE」のボーカル・モモ(若葉竜也)と出会い、彼らの熱量に巻き込まれていきます。
伝説的一作ともいえる2003年公開の映画『アイデン&ティティ』を手がけた田口トモロヲ監督、脚本・宮藤官九郎、主演・峯田和伸のチームが再集結した作品、しかも実在のミュージシャンをモデルにした物語。この情報とあらすじを踏まえると、「音楽ファン向けの映画?」「当時を知っている人向け?」と思うかもしれません。恥ずかしながら自分も『アイデン&ティティ』は好きでも、本作に登場する人物たちのモデルとなったバンドマンたちをほぼ知らずでした。もちろん、知っている方はさらに楽しめる要素はあると思いますが、結果的に何も知らない人でもまったく問題ない映画です。なぜなら本作は誰もが一度は抱くであろう“夢を見ること”を描いた映画だからです。

モモをはじめ、劇中に登場するバンドマンたちは、傍からみれば現実を見ていない理想主義者たち、夢追い人ともいえます。自らの居場所となるライブハウスを開拓し、手作りの雑誌を作り、自分たちでレコードをプレスする。コスパやタイパを重視する2026年からしたら、完全にそれらとは真逆を突き進む生き方です。でも、その姿が否応なしにカッコよくうらやましく映ります。
彼らは絶対に他者に自分を委ねないし、自分を恥じることもしません。むしろ、“流される”ことこそが最も愚かでダサい。曲がりなりにもエンタメ業界に足を踏み入れた自分も、彼らと同じような志を持っていたはずなのに、いろんな目を気にしていつしか失い、彼らが嫌うダサい奴になっていたことを突きつけられた思いでした。
劇中、モモが放つ「いいものは売れるべき、でも売れたものがいいわけじゃない」という言葉があります。生きていくためにはお金を稼ぐ必要があり、何かを続けるためには売れる=結果がどんなことにも必要です。でも、そもそも何のためにそれをはじめたのか、何のために自分はそれを選んだのか。それを見失ってまで結果を選んでは、そもそもの生きる意味をなくしてしまう。現実を見るために、生きていくためにこそ、ロマンや夢が必要なんだとモモの言葉は教えてくれます。
とはいえ、そんなモモも理想と現実の間で苦しみ、堕ちるところまで堕ちていきます。そんな状況の彼を救ったのは、共に夢を見た仲間であり、かつての自分が見た夢です。文字にすると陳腐化してしまいますが、「夢があるから生きていける」。これが真理であると心から思わせてくれたのが本作の凄さでした。

モモ役の若葉竜也、ユーイチ役の峯田和伸を筆頭に、役者陣は全員が1978年を生きた人間になっています。絶賛大河ドラマで主演を務めている仲野太賀もまさかの全裸(!!)で登場など、何のためらいもなく振り切った芝居を見せてくれています。
何かと生きづらくなり、夢を見ることを笑われてもしまうこの時代。『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』が放つエネルギーは、自分の心を動かすスイッチとなるはずです。峯田和伸&若葉竜也によるエンディング曲「宣戦布告」も最高なので、映画館で味わい尽くしてほしい一作です。
■公開情報
『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』
全国公開中
出演:峯田和伸、若葉竜也、吉岡里帆、仲野太賀、間宮祥太朗、中島セナ、神野三鈴、浜野謙太、森岡龍、山岸門人、マギー、米村亮太朗、松浦祐也、渡辺大知、大森南朋、中村獅童
監督:田口トモロヲ
脚本:宮藤官九郎
原作:地引雄一『ストリート・キングダム』
音楽:大友良英
エンディング曲:「宣戦布告」(峯田和伸/若葉竜也)
企画製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2026 映画『ストリート・キングダム』製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/streetkingdom
公式X(Twitter):@streetkingdomjp
公式Instagram:@streetkingdomjp





















