ゼンデイヤのAI写真は“笑い話”ではない アカデミー賞で明暗わけた2名の俳優も標的に

【解説】捏造AIの餌食となるハリウッド俳優

連鎖していくフェイク

 2026年のアカデミー賞主演男優賞は、何かと話題になった。ティモシー・シャラメとマイケル・B・ジョーダンの一騎打ちと言われ、ジョーダンが受賞。しかし、結果発表の直後に、キム・カーダシアンとジョーダンのオンラインでのやり取りのスクリーンショットと思われる画像がインターネット上で拡散された。

 様々なアカウントが発信したそのやり取りでは「(受賞は)当然よ。それより彼って今シングル? ああ、友達のために聞いているだけ」とカーダシアンがコメント。これに対し、ジョーダンが自身のXアカウントで「間に合っています。黒人男性が成功するたびに、こうやって誰かがその物語を変えようとしてくる。ただ、今回はそうはさせない。この受賞のためにものすごく努力してきた。だから、僕を巻き込まないでください」という声明を出し、それらの投稿がスクリーンショットで並んでいた。

 あたかも本当にジョーダンが実際に投稿したように思えるため、多くの人がまた何も考えずに「これだからMBJは推せる!」と盛り上がっていた。しかし、ジョーダンのXアカウントが2024年から動いていないことなんて、本人のページに飛べばすぐわかることなのにそうせず、少し時間が経ってからノートに「事実とは異なる」と補足が追加される。ジョーダンは株を上げたが、カーダシアンの評判はもちろん下がった。

ティモシー・シャラメ (Photo by Chelsea Lauren/Shutterstock)

 そして時を同じくして、ジョーダンとアカデミー賞主演男優賞を競っていたシャラメも、捏造のInstagramストーリー画像によって株を落とされる事態に。きっかけは彼が「バレエなんて誰も気にしない」という発言で炎上したこと。それに便乗する形で捏造のInstagramストーリー画像がAIで作成・拡散された。それも、一度ではなく複数回にわたって、である。

 オスカー受賞を逃した時も、「『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』のチームを誇りに思う。みんなが頑張って取り組んだ、美しい作品だ。今夜の受賞者の皆さん、おめでとう。アカデミーも、ノミネートしてくれてありがとう。正直、ちょっと(結果には)がっかりだけど、感謝しています」という内容のストーリー画像を、アカウント(@celebsnapzx)は「オーマイガー、ティモシー・シャラメが消したインスタストーリー、受賞できなかったことをこんなふうに言っててやばいんだけど(泣笑)」という投稿文と共に拡散。

 これに、バレエ発言でシャラメをサンドバッグにしても良いと捉えたものたちが、便乗する形で彼を陥れる発言を重ねた。中には「あの発言のせいでオスカーを逃したのに、まだ懲りていない」という趣旨のものもあったが、そもそもあの炎上の前に投票は締め切られているため、受賞結果には何の関係もない。そういった“事実”が蔑ろにされ、バッシングが不当に加速している。

 このように、今年のアワードシーズンは特にAIによるフェイクニュースに多くの人が翻弄されていた。ゼンデイヤの件は、決して笑い事ではない。今回の話題性や拡散力を考えると、今後もこういった悪質な行為は増えていくのだろう。そして、どんどん人々が正気を失って、真実を確かめることもなく便乗して何かを書き込み、感情をぶつける行いが加速していく。そんな今、改めて我々には個人の理性と、正しい情報の収集・判断能力が求められている。

出典
https://www.femalefirst.co.uk/celebrity/zendaya-seemingly-addresses-wedding-rumours-1439056.html
https://www.newsweek.com/michael-b-jordan-kim-kardashian-single-fact-check-11708896
https://www.youtube.com/shorts/Y85O6b3AziQ
https://www.dexerto.com/entertainment/ai-zendaya-and-tom-holland-wedding-photos-pass-10-million-likes-3331313/

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