第98回アカデミー賞は盛り上がりに欠けた? “賞”と“ショウ”の価値を見直すタイミングに

第98回アカデミー賞は盛り上がりに欠けた?

 前哨戦段階から接戦を繰り広げていた『ワン・バトル・アフター・アナザー』と『罪人たち』が、最後まで付かず離れずの戦いを見せた第98回アカデミー賞。結果的には作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞、編集賞、そして新設のキャスティング賞の計6部門に輝いた『ワン・バトル・アフター・アナザー』の全面的な勝利という幕切れとなった。

【受賞結果一覧】第98回アカデミー賞、『ワン・バトル・アフター・アナザー』が最多6冠達成

第98回アカデミー賞授賞式が、3月16日(日本時間)に米ロサンゼルス・ハリウッドのドルビーシアターで開催された。ポール・トーマス…

 対する『罪人たち』は主演男優賞と撮影賞、あとは前哨戦の結果から勝利がほぼ確定していた脚本賞と作曲賞の計4部門にとどまる。とはいえ、直前で急激な伸びを見せて逆転勝利を果たしたマイケル・B・ジョーダンと、女性撮影監督として初受賞を果たしたオータム・デュラルド・アーカパウの登壇シーンでの会場の盛り上がりは大きく、各部門のノミネート紹介時に『罪人たち』の映像が流れた際の歓声も群を抜いていた。“賞”としては『ワン・バトル・アフター・アナザー』が勝ち、“ショウ”としては『罪人たち』(あるいは『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』かもしれないが)の勝利といったところだろうか。

ワーナーの「全面勝利」と、スタジオの政治力学

『ワン・バトル・アフター・アナザー』©2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

 いずれにせよ、『ワン・バトル・アフター・アナザー』も『罪人たち』もワーナー・ブラザースの作品。アカデミー賞を作品単位ではなくスタジオ単位の催事として捉えるならば、両者のあいだに勝ち負けなど存在していない。同社は他にも『WEAPONS/ウェポンズ』のエイミー・マディガンが助演女優賞を受賞。オープニング映像でホストのコナン・オブライエンが彼女の役柄の真似をしていたように、全体を通じて買収騒動に揺れるワーナーへのはなむけの授賞式となったと言わざるを得ない。

 そういった意味では渦中のスタジオであるパラマウントが一つのノミネートも獲得できず(『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』は前作同様に技術部門に挙がってもおかしくなかったが、音響賞のショートリスト止まりであった)、買収から撤退したNetflixが『フランケンシュタイン』で3部門、『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』で2部門、あとは短編ドキュメンタリー賞と短編実写映画賞の7つのオスカーを獲得したという点も興味深いところだ。

 こうした映画界の政治がらみと、文字通りの政治的な背景がいろいろと見え隠れするアカデミー賞になったわけだが、純然と映画界の頂点を決める“賞”として見るとどうか。受賞結果の如何にかかわらず、やや盛り上がりに欠ける印象となったことは否めない。前哨戦とほぼ変わらなかったり、従前から有力視されていた受賞者がオスカーを手にしたり、そうした順当な結果に終わることは珍しくはないが、その順当さを裏付けるためのストーリーがやはり弱く見える。結局そこには、映画界云々ではない要素がべったりと付着しているからであろう。

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