『教場』205期生が更新したシリーズの意味 綱啓永、齊藤京子らの“表現者”としての覚醒

『教場』綱啓永、齊藤京子らが見せた覚醒

金子大地(笠原敦気役)

 金子大地が演じる笠原敦気は、反社会勢力を排除するために警察学校にやってきたキャラクターだ。彼もまた大マジメな性格で、強い意志を持って訓練に臨んでいる。誠実で、とても真っ直ぐである。

 こういった愚直な人物というのは、単純なイメージでくくられがちだ。“真っ直ぐ”なところばかりが際立って、個人を構成するそれ以外の要素が霞んでしまう。その結果として、“アツい男”などといった端的なイメージで語られてしまうことになる。けれども金子が立ち上げた笠原像は、かなり複雑なものだ。ほかの生徒と比べてハンデがあるため、それをカバーするかのように彼は訓練に打ち込む。これはおそらく脚本上に記されているものだ。金子が表現した真の複雑さは、『教場 Reunion』で主演の木村と対峙する場面にあらわれた。涙で潤んだ彼の瞳は、笠原の内なる想いの強さを物語っていた。目だけでここまで内面を表現できるものかと圧倒されたものだ。2026年で30歳を迎える金子は、まだまだポテンシャルを秘めている。非常に頼もしい俳優である。

中村蒼(若槻栄斗役)

 いよいよ最後のひとり。中村蒼が演じる若槻栄斗は、自身のフィジカルに強い自信を持っている存在だ。幼少期に兄にいじめられたことからブラジリアン柔術を習いはじめ、茶帯を取得しているのだという。爽やかで快活な、自信に満ち溢れた正義漢。彼に対して誰もがそんな印象を抱いただろう。

 ところがこの若槻は、戦闘態勢に入ってスイッチが切り替わると、普段のにこやかな表情が消えてデスマスクになる。私たちが日常生活を送るうえで俳優たちのような演技をする機会はほとんど皆無だ。けれども、意識的に表情を作ることはあるだろう。笑顔や困り顔、怒りの態度を示すものなどがそうだ。しかし本作で中村が見せるような表情を浮かべたことのある者がいるだろうか。無表情ともまた違うもの。もしかすると若槻のように、無意識のうちに浮かべていることはあるかもしれない。ただ、演じる中村は、これをカメラの前で意識的に行っている。日常的に扱うことのない表情であり、その表現の匙加減は非常に難しいはず。それ相応の経験を持つ実力者だけに許されたチャレンジだと思う。ここに並んだ者たちの中では年長者であり、演技者として中堅のポジションにある中村の、その驚くべき芸当に魅せられる。

 さて、ここに挙げた4名がどのような経緯で『教場』シリーズの一員になったのか、『教場 Reunion』と『教場 Requiem』の座組の一端を担う者に選ばれたのか、本当のところは分からない。しかしながら、非常に高いハードルがあったことは容易に想像できる。この者たちと同世代で活躍している俳優はほかにも存在しているし、もちろん、作品や役との相性だってある。けれどもこうして連続して2作に触れたいま、それぞれのキャラクターを演じられるのはこの4人以外にいないはずだと断言できる。綱、齊藤、金子、中村だから生み出すことのできたパフォーマンスが、たしかに刻まれた。

 この『教場』シリーズで出会った視聴者/観客もいれば、これまでの個々に対する印象を覆されて、出会い直すことになった方もいるはず。次のステージでまた再会したい。

■配信・公開情報
映画『教場 Reunion』
Netflixにて独占配信中
映画『教場 Requiem』
全国公開中
出演:木村拓哉、綱啓永、齊藤京子、金子大地、倉悠貴、井桁弘恵、大友花恋、大原優乃、猪狩蒼弥、中山翔貴、浦上晟周、丈太郎、松永有紗、佐藤仁美、和田正人、荒井敦史、高橋ひとみ、佐藤勝利、中村蒼、小日向文世、赤楚衛二、白石麻衣、染谷将太、川口春奈、味方良介、大島優子、三浦翔平、濱田岳、福原遥、目黒蓮、坂口憲二
原作:長岡弘樹『教場』シリーズ/『新・教場』『新・教場2』(小学館刊)
脚本:君塚良一
監督・プロデュース: 中江功
配給:東宝
©フジテレビジョン ©長岡弘樹/小学館
公式サイト:http://kazama-kyojo.jp/
公式X(旧Twitter):https://x.com/kazamakyojo
公式Instagram:https://www.instagram.com/kazamakyojo/

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