『ロビー!』はただのコメディ映画ではない “監督”ハ・ジョンウが引き出す俳優たちの名演

『ローラーコースター!』(2013年)や『いつか家族に』(2015年)などで、監督経験もあるハ・ジョンウが手掛けた3本目の映画『ロビー! 4000億円を懸けた仁義なき18ホール』が日本でも公開となる。
今回のテーマは、ずばり「接待ゴルフ」である。ハ・ジョンウ演じる若社長が、契約をとりつけようとロビー活動を繰り広げる物語だ。
小規模テック企業「ユン・インタラクティブ」の代表チャンウク(ハ・ジョンウ)は、シリコンバレー仕込みの技術を持ち、現在もEV車の充電システムを開発し、その技術を採用してもらおうと奮闘している。しかし、不器用で営業力のないチャンウクは、同じ案件を狙うシリコンバレー時代からのライバルで、「ソン・ブラザーズ」の社長グァンウ(パク・ビョンウン)に、押され気味であった。
そんなとき、突然チャンウクの母親が亡くなり、その葬式にグァンウがやってきた。グァンウは、チャンウクの技術を巨額の金額で買収したいと言ってくるのだが、チャンウクは彼のオファーがライバル潰しでもあり、また技術力吸収であることを知っていた。人間関係で仕事を進めることに不器用なことは自覚しているチャンウクだったが、ライバルにプライドを傷つけられ、スマートパーキング事業の入札を担当するチェ室長(キム・ウィソン)を口説き落とすため、彼が大好きなゴルフを通じて、接待ゴルフという「ロビー活動」を開始する。
ストーリーを詳しく書いたが、映画を観始めてすぐに気付くのは、この映画、コメディと言いつつ、なかなかの複雑な面白さがある頭脳戦だということである。それもそのはず、このプロットを読んだ俳優たちは、「今まで読んだシナリオのうち一番独創的だった」(キム・ウィソン)、「『ローラーコースター!』のDNAが受け継がれた作品」(イ・ドンフィ)、 「言葉のセンスとセリフの流れが実にいいシナリオ」(パク・ビョンウン)と絶賛しているが、決してそれが俳優仲間だから言った言葉ではないことは映画を観ればわかる。
脚本もハ・ジョンウが手掛けているが、『1987、ある闘いの真実』(2017年)でも組んだ脚本家キム・ギョンチャンも名を連ねている。それを聞いて、なるほど……と思うほど、優れた脚本なのである。
そう感じさせるのは、「接待ゴルフ」に必死になる不器用な社長の悲哀がコミカルに感じられるのと同時に、世の中で、ものごとをすすめるために、商品や企画の良さを知ってもらい、その担当者に採用されるために人心掌握をしたりするということが、いかに大切かを、我々は知っているからだろう。
それは、チャンウクのように、技術力を採用してもらうビジネスの現場で必要なだけではない。現実社会では、国際映画祭での受賞に際してや、政治においての法案を提出する際にも行われていることである。アメリカと違って日本ではロビイストの登録などの法律もなく、不透明な部分が大きいが、ルールを守ってアプローチをすればポジティブな面も存在する。
ロビー活動とは少し異なる部分もあるが、世の中を動かすための「かけひき」という面で、金大中をモデルに、優秀な選挙参謀があらわれたことで、政治の世界をかけあがる様子を描いた『キングメーカー 大統領を作った男』(2022年)を思い出したほどである。劇中で金大中をモデルにしたキム・ウンボム(ソル・ギョングが演じている)も、不器用で大胆なことはできない人と描かれていたが、参謀のソ・チャンデ(イ・ソンギュン)の戦略があったからこそ、政治家として頭角を現すのである。

























