『パンダより恋が苦手な私たち』で一葉の“揺れ”を体現 上白石萌歌が築いてきたヒロイン像

上白石にとって代表作ともいえる『366日』の玉城美海は、杏子とは逆に、恋から逃げずに真正面から向き合う役だった。高校時代、先輩の真喜屋湊(赤楚衛二)が奏でる音楽に惹かれて、「いつか湊先輩が作った曲、聴きたいです」と静かに声をかける場面がある。あれは告白というより、あなたの大事なものに触れてみたい」という気持ちがそのまま言葉になった瞬間だった。言い方は控えめなのに、真っ直ぐで、だからこそ胸に残る。物語の後半に理由もわからないまま別れを告げられたときも、彼女は感情をぶつけて取り乱すわけではない。泣き叫ぶでも、問い詰めるでもなく、ただ言葉を失って立ち尽くしてしまう。その沈黙が、ここまで積み上げてきた時間を一気に重くする。上白石は、泣かせる芝居で泣かせるのではなく、声が出なくなる瞬間そのものを見せて、恋を失う痛みをこちらに渡してくる。
『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)の七瀬美雪にも、上白石らしい胸キュンがある。事件に夢中になっている金田一に差し入れを渡そうとして、軽く受け流されてしまう場面だ。大げさな言い合いになるわけでも、気まずい空気が長く続くわけでもない。ただ、美雪の表情がほんの少しだけ曇り、拗ねたような顔になる。その一瞬で、片思いの切なさが伝わってしまう。報われるかどうかよりも、好きでいてしまう気持ちの方が先に立つ。上白石は、その感情を雑に処理せず、ちゃんと残してみせる。
『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系)では、極限状態の中で芽生える恋を描いた。畑野紗枝として、萱島直哉(山田裕貴)に冗談めかして「髪、洗ってセットしてくれますか」と頼む場面がある。甘いセリフではない。それでも、あの言葉が出る時点で、2人の距離が以前とは違う場所まで来ていることがわかる。生きることに必死な状況の中でも、人と人の間にふっと親密さが生まれてしまう。その自然さを、上白石は力まずに演じていた。

『パンダより恋が苦手な私たち』第5話では、司とのデートが描かれる。けれど、それはただ甘い時間を並べる回にはならないはずだ。行きたい気持ちがあるのに、傷つくのが怖い。楽しくしたいのに、うまく笑えない。そういう矛盾を抱えたまま、一葉は言葉を探し、迷い、立ち止まりながらその時間を過ごしていく。その不器用さを、上白石は大げさな演出に預けず、間の取り方や視線の揺れ、息の浅さといった細部で見せてくれるだろう。デート回で、一葉が自分の気持ちから目をそらさずにいられるのか。少しでも前に進めるのか。その行方を、見届けたい。
恋が苦手とされるパンダなど動物たちは、実は限られたチャンスを活かす「恋愛上級者」だった。動物の求愛行動から、常識に囚われる現代人がシンプルに幸せになるヒントを解き明かす。
■放送情報
『パンダより恋が苦手な私たち』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00~放送
出演:上白石萌歌、生田斗真、シシド・カフカ、仁村紗和、柄本時生、三浦獠太、片岡凜、佐々木美玲、佐々木史帆、髙松アロハ(超特急)、平山祐介、宮澤エマ、小雪、筧美和子
原作:瀬那和章『パンダより恋が苦手な私たち』(講談社文庫)
脚本:根本ノンジ
演出:鈴木勇馬、松田健斗、苗代祐史
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:藤森真実、白石香織(AX-ON)
音楽:MAYUKO
主題歌:生田斗真「スーパーロマンス」(Warner Music Japan)
制作協力:AX-ON
©日本テレビ
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