『パンダより恋が苦手な私たち』で一葉の“揺れ”を体現 上白石萌歌が築いてきたヒロイン像

上白石萌歌が、『パンダより恋が苦手な私たち』(日本テレビ系)で“恋に踏み出せない”編集者・柴田一葉を演じている。恋が得意ではない自分を、無理に更新しようともしない。それでも誰かに惹かれてしまう。そんな一葉の揺れが、放送開始直後から静かな共感を呼んでいる。
一葉は生活情報誌『リクラ』の編集部で働きながら、恋愛コラムの新企画を担当することになった。仕事として恋について書かなければならない一方で、本人の恋愛経験は多いとはいえない。誰かから好意を向けられても、嬉しさより先に戸惑いが立ち、どう受け止めていいかわからず距離を取ってしまう。恋が嫌いなのではなく、傷つく可能性を考えて、踏み込む前に身を守ってきた人物だ。
そんな一葉の前に現れるのが、動物の求愛行動を人間の恋愛に当てはめて語る動物学者・椎堂司(生田斗真)である。合理的で率直、思ったことをそのまま口にする司の言葉は、一葉の弱い部分を遠慮なく突いてくる。悪意はないが配慮もない。その率直さに戸惑いながらも、一葉の感情は確実に動かされていく。

上白石の芝居が印象的なのは、一葉の「踏み出せなさ」をセリフで説明してしまわないところだ。言いかけて言葉を引っ込める。視線がふっと逸れる。笑おうとして、うまく笑いきれない。そういう小さな反応が重なることで、一葉が臆病になってしまう理由や、自分を守ろうとする癖が自然に伝わってくる。恋が苦手だと声高に主張するのではない。目の前の相手を前にして、気持ちが簡単には整理できない。その割り切れなさをそのまま置いていく。だから一葉の距離の取り方が嘘っぽくならず、現実の感情としてこちらに届いてくるのだろう。
この表現の仕方は、上白石がこれまで演じてきた恋愛のキャラクターとも、きれいにつながっている。たとえば『ロマンティック・キラー』の星野杏子は、恋愛なんてまっぴらごめんだと突っぱねる、かなり極端な設定の人物だった。だからこそ、壁ドンや膝枕といった少女漫画のお約束が目の前に差し出されるたび、杏子は全身で拒否し、茶化し、逃げ切ろうとする。その勢いがコメディとして気持ちいい一方で、胸を掴まれるのは、拒み切ったはずの気持ちが一瞬だけ顔を出すところだ。たとえば、強がって言い返した直後に、相手の顔を見ないまま呼吸だけ乱れてしまう。視線をそらしたのに、結局は相手の動きを追っている。平気なふりを重ねるほど、言葉だけが妙に早口になる。理屈では否定しているのに、心のほうが先に反応してしまう。そのズレが、笑いよりも先にときめきを連れてくる。映画版は床ドン、壁ドン、膝枕といったロマンティックな展開そのものも次々に仕掛けてくるが、上白石が面白いのは、そこで真正面からキュン顔を決めないことだ。決め台詞で落ちるのではなく、落ちそうになるのを必死で押し戻す。その押し戻しの途中で、隠しきれない揺れが滲む。杏子の胸キュンは、まさにそこにある。























