『ばけばけ』は“新婚生活”をどう描く? 『あんぱん』『虎に翼』との比較で占う夫婦像

そういった“照れ”を感じずにはいられなかった名作のひとつとして、『虎に翼』(2024年度前期)がある。しかもこの作品には私たち視聴者の心を揺さぶる“新婚生活の風景”がふたつも描かれた。ひとつは、ヒロイン・寅子(伊藤沙莉)と佐田優三(仲野太賀)の。もうひとつは、寅子と星航一(岡田将生)のものである。
優三というマジメで心優しい青年は、もとは寅子の実家である猪爪家の書生だった人物だ。ふたりの間にそういった気配はほとんど感じられなかったが、女性弁護士としての社会的信用を得るために結婚をしようと目論んでいた寅子に対し、優三がプロポーズするかたちで結ばれた。ふたりはずいぶんと前から同じ屋根の下で生活をともにしていたため、その“新婚生活の風景”はどうにもぎこちないものだった。視聴者の多くが終始、照れていたのではないだろうか。
仲野太賀&岡田将生、『虎に翼』で2人の夫が繋いだバトン “ありのままを認める”象徴に
ついに最終週を迎えたNHK連続テレビ小説『虎に翼』。本作でも、ヒロイン・寅子(伊藤沙莉)を支えた2人の夫は、ヒロインの人生にそれ…やがてふたりの歩幅とペースが同じになったとき、そこには愛情が芽生え、日本中のお茶の間が多幸感に満たされた。ふたりの物理的な距離感は変化し、交わし合う言葉の一つひとつに体温が感じられたものだ。伊藤沙莉と仲野太賀が体現した“新婚生活の風景”は、2020年代の「朝ドラ」における屈指の名シーンだったといえるだろう。けれども、戦時中に優三を亡くした寅子は長い時を経て、やがて仕事仲間である航一と再婚した。
人生におけるさまざまな困難を経験した寅子は、自身を取り巻く社会の状況もそれなりに変化した。航一も再婚だが、ふたりは社会的に圧倒的に自立した大人でありながら、どちらも完璧な人間だとはいえない。「朝ドラ」だからこそ描くことができるフィクショナルな展開の中で、伊藤と岡田将生が等身大の人間関係を築き上げ、多くの支持を得た。寅子と優三の“新婚生活の風景”とはまた異なる、絶妙な照れくささが私たちの心をくすぐったものだ。またあのふたりに会いたくて仕方がない。

さて、これからはじまるトキとヘブンの夫婦生活。微笑ましい瞬間の連続がきっと待っているに違いない。私たちは『ばけばけ』ならではの“新婚生活の風景”を、目を細めながら見守ることになるのだろう。朝ドラが描く新婚生活とは、たんなる恋の成就の証ではない。そこには1組の夫婦が人生というものをともに引き受けようとする、“覚悟の風景”があるはずだ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK
























