結局『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が世界最高の映画 40周年記念再上映に寄せて

リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、「あなたにキスしても弟にしてるみたい」のセリフの意味が初見ではよくわかっていなかった徳田が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』公開40周年限定上映をプッシュします。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

「好きな映画」を聞かれてコテコテの古典作品を答えることには勇気がいる。とはいえ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』はさすがにいつ観ても「おもしろい」。
この語義矛盾めいた「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という字面だけでまずちょっとおもしろい。これほどありふれた単語を並べただけでここまで端的かつ立体的に物語のスケールと合致するタイトルワークがあるだろうか。
冒頭、用途がよくわからない発明品が何やら蠢いているが、これが「時計台」の伏線であることを抜きにしても、単純にその運動がちょっとおもしろい。「あとで出てきそうなマッドサイエンティストっぽいおっさんが作ったのか」と容易に連想させる(これが映像の語りが優れているからそうなのか、すでに「ドク」という人物をあまりに知りすぎているからなのかは判断できない)。
ある日マーティ(マイケル・J・フォックス)はドク(クリストファー・ロイド)のもとを訪れ、タイムマシンであるデロリアンの存在を知り……といったあらすじを2025年の今になって説明するのはもはや新鮮だ。ひょんなことからマーティだけが過去にタイムスリップしてしまい、「過去改変」の危機をかいくぐりながら未来への帰還を試みる……といった、タイムスリップものそのものの説明かと思われるほどありふれた展開は、やはり『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が40年前の時点でまず辿ったというのだから驚く。

マーティたちの生きる1985年がもう大分昔なので、彼が飛んでしまった1955年の街並みがどの程度「過去らしい」風景なのかよくわからなくなっていることに気付かされるが、マイケル・J・フォックスの演技を見ていると「ああ、過去に飛んでしまって困っているのだな」と思う。「過去に飛んでしまって困っている」人間の表情はこのとき発明されたのか。
マーティの父・ジョージ(クリスピン・グローヴァー)とそのいじめっ子・ビフ(トム・ウィルソン)の構図にも驚かされる。あまりにも無邪気と言いたくなりかねない仮想敵の描き方だが、悪気は感じない。『ダークナイト』でもなんでもいいが、「克服すべき敵の設定は本当は難しい」みたいな葛藤とかそういう小賢しい立論が蹴り飛ばされているかのようだ。

それからいちいちエンストしたがるデロリアンとか時計台のケーブル設置に5段階くらい手こずるドクとかはいちいちおもしろい。遅延のための遅延といえばそれまでだが、描写のパワーで押し切り画面が動いているだけでおもしろい。やはりいつ観てもおもしろい……というより正確には観る時期に応じて異なる発見をもたらしてくれるのが古典のおもしろさだろう。
こういうことすらももはや決まり文句と化しているが、とはいえ本当に実際に「そう」なのが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だ。
◼️公開情報
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』公開40周年限定上映
IMAX/4DX にて1週間限定公開中
出演:マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、クローディア・ウェルズ、リー・トンプソン、クリスピン・グローヴァー、トーマス・F・ウィルソン
吹替:三ツ矢雄二、穂積隆信、佐々木優子、高島雅羅、古川登志夫、玄田哲章
監督:ロバート・ゼメキス
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:ロバート・ゼメキス ボブ・ゲイル
撮影:ディーン・カンディ
音楽:アラン・シルヴェストリ
BACK TO THE FUTURE/アメリカ/1985年/PG-12/IMAX(字幕版)・4DX(字幕版・吹替版)/音声1英語5.1chサラウンド2日本語モノラル/16:9ビスタ/4K DCP/116分
配給:東宝東和
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