『踊る大捜査線』から『国宝』へ 実写邦画のトレンドは20年でどう変化したのか?

『踊る』は、警察を会社組織のように描き、現場を知らない警視庁のエリート刑事たちに所轄の刑事たちが翻弄される姿をコミカルかつシリアスに描く君塚良一の巧みな脚本が評価され、これまでにないリアルな刑事ドラマとして絶賛された。そして1998年に作られた最初の劇場映画『踊る大捜査線 THE MOVIE』が興行収入101億円を記録。テレビドラマの続編が劇場映画として作られそれが大ヒットする、ドラマから映画へというメディア展開を確立した。

そして、映画第2作となる『踊る2』は2003年に邦画の歴代興行収入第1位となった。
つまり、テレビドラマの続編だから『踊る』はヒットしたと言えるのだが、実は『踊る』はテレビドラマとしては、とても複雑な作品だった。
放送時の視聴率は当時としては大ヒットではなく、細部まで作品を観て何度も視聴する熱心なファンに支えられたオタク的な作品だった。監督の本広克行は『踊る』に海外ドラマの『ER緊急救命室』やロボットアニメの『機動警察パトレイバー』や『新世紀エヴァンゲリオン』のエッセンスを持ち込み、オタク的なドラマとして当時は評価された。そこにプロデューサーの亀山千広によって『天国と地獄』を筆頭とする昔の日本映画のエッセンスが持ち込まれたことで、『踊る』はテレビドラマから派生したアニメや海外ドラマのセンスを散りばめた新しい作品でありながら、邦画の伝統も引き継いだ新しさと古さが共存した作品となり、その絶妙な融合によって絶大な支持を獲得した。

この古さと新しさの融合は、『国宝』にも言えることだ。
『国宝』の製作は、ソニーグループ傘下のアニプレックスの子会社・ミリアゴンスタジオ。
アニプレックスはアニメーション事業で知られており、現在大ヒットしている『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』も製作している。おそらく、アニメ製作で確立した成功のノウハウが『国宝』にも注ぎ込まれていると考えて間違えないだろう。
テレビ局が作った『踊る』が邦画を変えたように『国宝』をきっかけにミリアゴンスタジオが邦画を変えるのだろうか? まだまだ勢いが止まらない『国宝』ブームの行方だけでなく、ミリアゴンスタジオの次の動向にも注目したい。
参照
※ https://bunshun.jp/articles/-/82351





















