『果てしなきスカーレット』小ネタまとめ 『ハムレット』引用からアクション作画まで

『果てしなきスカーレット』小ネタまとめ

 細田守監督の最新作『果てしなきスカーレット』が11月21日に公開された。日常シーンに立脚した従来の細田作品とは異なり、壮大なファンタジー設定となっている同作だが、だからこそ「今までよりとっつきにくくなった」と感じる人もいるかもしれない。

 そこで本稿では、同作をより深く楽しめるようになる情報をいくつか紹介していきたい。その内容は大まかに2つあり、1つはストーリーラインを理解するための補助線となる小ネタ、もう1つは映像表現に関わる小ネタだ。

※本稿は『果てしなきスカーレット』のネタバレを含みます。

【予告2】『果てしなきスカーレット』<11月21日(金)公開>

 まずはあらすじから説明しておくと、同作の舞台となっているのは16世紀のデンマーク。物語は主人公のスカーレットが父であるデンマーク王を叔父・クローディアスによって殺されてしまい、復讐を決意するところから始まる。しかしその復讐は失敗に終わり、スカーレットは毒杯を飲まされて「死者の国」で目を覚ます。「死者の国」とはすでに命を失ったものたちが集まり、もう一つの生を送っている世界だ。

 この世界に憎きクローディアスがやってきていることを知ったスカーレットは、ふたたび復讐の旅を始めるのだった。

 固有名詞でピンときた人もいるかもしれないが、この物語は明らかにウィリアム・シェイクスピアによる戯曲『ハムレット』を着想元としている。中世デンマークを舞台とした王位争いに端を発して、主人公が父の復讐を決意する……という展開はほとんど相似形。そもそもクローディアスにガートルード、ポローニアス、レアティーズ、ローゼンクランツ、ギルデンスターンと、登場人物たちの名前と設定が大部分重なっている。

 さらに、『ハムレット』を下敷きとしたシーンも随所に登場。たとえばスカーレットは悪夢のなかで、宮野真守と津田健次郎が演じる墓掘り人と遭遇するが、同じように『ハムレット』でもイングランドから戻った直後のハムレットが墓掘り人と出会うところが描かれていた。

 また物語の終盤では、“見果てぬ場所”の門を開くことができなかったクローディアスが自身の罪を懺悔し、そこにやってきたスカーレットが剣を振るべきか逡巡するというくだりがある。これは明らかに『ハムレット』でクローディアスが自身の罪を懺悔する場面を意識したものだ。

 そしてスカーレットが坊主のような見た目の聖に対して「寺に行け!」と言う箇所は、ハムレットが恋人のオフィーリアに「尼寺へ行け」という言葉を投げかける有名なシーンのオマージュだろう。そのほか、“毒杯”が重要な役を果たすところなども一致している。

 なお同作の内容について、SNS上では「スカーレットがセリフで自分の心情を説明するパートが多い」といった指摘も上がっていたが、これは『ハムレット』を意識して演劇的な演出に寄せた結果だったのかもしれない。

 もちろん同作と『ハムレット』の設定が一致しているというわけではなく、作品の全体像としてはまるっきり別物。エンタメとして分かりやすい「復讐のための旅路」という構造のストーリーなので、予備知識がなければ楽しめないということはまったくない。また両作品の大きな違いとして、主人公の性別が女性に代わっている点や、先王の亡霊が復讐をそそのかしてこないといった点も挙げられるだろう。

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