『ばけばけ』に夢中になる予測不可能の仕掛けの数々 吉沢亮が“いじられキャラ”として定着

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第8週「クビノ、カワ、イチマイ。」は、“ビア”コントに始まり、スキップ回を経て、クイズ大会に至る。第40話はヘブン(トミー・バストウ)のことを知るためのクイズ大会が幕開けとなるのだ。全くもって予測不可能の展開である。
スキップをマスターしようと、学校でこっそり練習していた錦織(吉沢亮)。それを廊下の陰から中学校の生徒である小谷(下川恭平)、正木(日高由起刀)、錦織の弟・丈(杉田雷麟)、ヘブンが見ていた。スキップの発祥はアメリカではあるが、実はヘブンはアメリカ生まれではないという会話の流れから、トキ(髙石あかり)も交えたヘブンを知るためのクイズ大会が開かれる。

ヘブンの生まれの国(正解はギリシャ)から、嫌いな日本の食べ物(糸こんにゃく)、料理屋を開いたことがあるかないか(ある)など、トキたちはクイズを通じてヘブンを知っていくが、錦織だけが一問も正解できない(ちなみに、トミー・バストウの嫌いな日本の食べ物は「梅干し」。11月1日放送『土スタ』より)。納得のいかない錦織はヘブンの脇机に飾ってある写真立てに写るイライザ(シャーロット・ ケイト・ フォックス)が奥様か御姉妹かそれとも……なのか、最後の問題にしてほしいと願いでる。
止めに入るのは、英語が分からないはずのトキ。ビアの泡が噴き出してしまった際に、一目散にイライザの写真を守っていた姿を見て、トキはそれが大切な人であることを察していた。以前、ヘブンは錦織に対して「思い出はべらべらと話すものじゃありません」と注意していたが、その思いは「私にも大切な方がいますが、そういうことはなるべく心の中にしまっておきたく」と銀二郎(寛一郎)を想起しながら話すトキとシンクロしている。

印象的なのはそっとトキを見つめるヘブンの姿。ヘブンもまた日本語が分からないはずにも関わらず、トキが自身に寄り添ってくれていることを感じ取り、クイズ大会の優勝者にトキを選ぶのだ。それは、トキとヘブンが互いを言葉でなく心で理解できた瞬間。皮肉にも、人に対して気遣いができるトキと、プライドが高く他人のプライバシーにズカズカと入り込む錦織が対照的に描かれている。しかし、錦織がそこまで嫌なヤツに映らず、むしろふてくされた姿が憎めない、どちらかと言えばいじられキャラになりつつあるのは、脚本と吉沢亮の芝居の力だろう。クイズ大会の優勝賞品としてトキに進呈されたブードゥー人形やトキが持ってきた鎌や独楽、さらに言えばパイナップルなどがさりげなく再び登場する、伏線とまではいかない遊びの散りばめも絶妙で素晴らしい。あと、「クエスチョンワン! ヘーブン!」が、めっちゃ口に出して言いたくなる。しじみ汁が飲みたくなったり、スキップができるか久しぶりに身体を動かしてみたり、気がつけば『ばけばけ』に夢中なのは筆者だけではないだろう。
翌月、トキへの給金に添えられていたのは、カエルの絵。阿佐ヶ谷姉妹が演じている、後にトキとヘブンの家の庭に住むことになるカエルであり、これも伏線的な遊びの一つ。それにトキはお辞儀をする自分の絵で返信をした。言葉は通じなくとも、思いは通じる。むしろ一番にヘブンのことを理解しているのはトキだ。確実にトキとヘブンの心の距離は縮まっていた。

そんな折に、第9週「スキップ、ト、ウグイス。」ではトキにとってのライバル・リヨ(北香那)が登場。さらに話題の勘右衛門(小日向文世)とタツ(朝加真由美)の恋模様にも進展が? ナレーションの阿佐ヶ谷姉妹も「たまらない、こういう展開!」と叫んでいる通りに、みんなが大好きな波乱の展開が繰り広げられそうだ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK























