『爆弾』の面白さに「ありがとう!」 “爆発”から感じた「生半可な作品にはしない」覚悟

やはり対決、バトル、タイマン……そういったものはかなり原始的なおもしろさであり、エンターテインメントなのだ。のらりくらりとこちらを翻弄する怪物じみたスズキタゴサクと、ちょっとした会話の糸口から相手の人としての輪郭、その本質を暴く「怪物退治」を試みる捜査官。例え暴力が(ほぼ)介在しない対決であってもそのソリッドで研ぎ澄まされた心理戦は観る者の胸を熱くする。それでも何事も暴力があるに越したことは無いため、本作は取調室の外では爆弾がポンポン爆発してくれる。さらには映画自体が「テーブルの下の爆弾」的作品であり、絵的には全く代わり映えの無い、小さな取調室であっても常に上質な緊張感で支配されている。

そして取調室という密室での会話劇を支えるのはキャスト陣の熟達した演技である。スズキタゴサクを演じた佐藤二朗の演技はまさに怪物じみており、対決映画の「乗り越えるべき敵」あるいは「怪物」としてこれ以上ない存在感を放っている。それに対する山田裕貴演じる捜査官の類家もいい。他の登場人物に比べてやや漫画っぽいキャラクターをしているものの、そこがむしろスズキタゴサクにタメを張れる人物として輝いている。このキャラをちゃんと実写映画の演技に落とし込んでいる山田裕貴もかなりすごい。

映画『爆弾』の続編が作られるとして、スズキタゴサクは欠かせない存在だろう。でも自分は類家も観たい。世界の空虚さをその瞳に映しながら、綺麗事から逃げない類家を。それからもちろん、苛烈で壮大な爆発も。
というわけで『爆弾』は、面白い上に爆弾がポンポン爆発するので必見の邦画だ。
■公開情報
『爆弾』
全国公開中
出演:山田裕貴、伊藤沙莉、染谷将太、坂東龍汰、寛一郎、片岡千之助、中田青渚、加藤雅也、正名僕蔵、夏川結衣、渡部篤郎、佐藤二朗
原作:呉勝浩『爆弾』(講談社文庫)
監督:永井聡
脚本:八津弘幸、山浦雅大
主題歌:宮本浩次「I AM HERO」(UNIVERSAL SIGMA)
配給:ワーナー・ブラザース映画
©呉勝浩/講談社 ©2025映画『爆弾』製作委員会
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