『べらぼう』染谷将太が背中だけで物語る歌麿の落胆 蔦重との“兄弟の絆”は過去のものに

“兄弟の母”つよ(高岡早紀)がいてくれれば……

たとえ報われなくても蔦重のそばにいたいという自分の“欲”を受け入れ、個人的な想いを胸に秘めて、絵師と本屋として蔦重と良い距離感を保っていくつもりだった。にも関わらず、蔦重はその距離を弟と兄の「家族」だとして踏み越えてくる。そのデリカシーの無さにほとほと呆れたのだろう。これまでは、そのフォローを“兄弟の母”であるつよがしてくれていた。だが、そのつよはもういない。
しまいには“子を生む”という歌麿にはどうしたって叶えられない喜びを突きつけられた。「おていさんには無理をさせられない」と、歌麿には身売り同然に借金のために働くようにとなかば強要する。もはやこれまでと思ったのも、無理はない。
蔦重は、かつて吉原に身売りされた女郎たちの悲しみを間近に見てきたはずだった。だが同時に、忘八たちに育てられた男でもある。搾取される側に心を配ってはいたものの、厳密には同じ気持ちにはなりきれない。それは仕方のないことかもしれないが、人は必死になるとこんなにも想像力が失われてしまうものなのか。歌麿の落胆した気持ちに、思わず共感してしまう。
つよがいてくれたら、どんなふうにふたりの間を取り持っただろうか。心を閉ざす歌麿との“兄弟の絆”が健在だと信じているのは、蔦重ばかり。定信とはまた違った形で孤立する蔦重を、つよが「べらぼう」と叱りつける声が聞こえるような気がした。
■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK





















