『ばけばけ』“異文化理解”を通して描く心の通い合い ヘブンの左目失明の過去が明らかに

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第24話では、異国の青年ヘブン(トミー・バストウ)の心の奥にある傷と、周囲とのすれ違いが丁寧に描かれた。異国の地で生きるヘブンの孤独と、松江の人々との微妙な距離感。第24話はコメディの温度を保ちながらも、異文化の孤独や誤解、そして優しさの形を静かに問う内容となっていた。

前回から花田旅館で暮らし始めたヘブンは、熱すぎる風呂に「地獄だ!」と叫んだり、目玉焼きの作り方を披露したりと、異国人ならではの言動で周囲を驚かせつつも少しずつ打ち解けていく。主人の平太(生瀬勝久)、ツル(池谷のぶえ)、ウメ(野内まる)ら旅館の面々に加え、しじみ売りとして訪れたトキ(髙石あかり)もその輪に加わり、ヘブンとの交流が生まれていた。トキが英語混じりで話しかけようと試みたり、ツルがヘブンの珍妙な日本語を真似してみたりと、ぎこちないながらも温かい交流が積み重なっていく光景は、この作品らしいユーモアと人情のバランスを感じさせた。異国の青年と松江の人々の間には言語の壁はあるけれど、言葉は通じずとも心は通わせられるのだ。
しかし、ウメの目の腫れをきっかけに、ヘブンの態度は一変する。彼女を心配するあまり「イシャ!」と強い口調で医者に行くよう促すが、平太が軽く受け流したことで誤解が生まれ、ヘブンは激昂して旅館を飛び出そうとしてしまう。実はその裏には、幼少期に片目を失明したという過去があった。人一倍見えなくなることへの恐怖と不安を抱えてきたヘブンにとって、ウメの目の腫れは放っておけない出来事だったのだ。

一方で、世話役の錦織(吉沢亮)は、なぜかヘブンに避けられ続けていた。松江中学の授業内容を共有できずに困り果てている錦織を見かねて、トキがヘブン探しを手伝うことに。道中、トキはかつて心を寄せた銀二郎(寛一郎)の話を切り出すが、錦織も詳しくは知らない様子。やがて2人は、遊女と遊んでいるヘブンを偶然見かける。誤解した錦織に対して、ヘブンは慌てて「ゴカイ! イッショニイタダケ!」とカタコトの日本語で弁明。なんとか誤解が溶けたわけだが、そこへ木刀を手にした勘右衛門(小日向文世)が現れ、場は一気に騒然。ヘブンはその隙を突いて逃走し、翌日には部屋に閉じこもったまま姿を見せなくなってしまう。

松江に着いた当初は異邦人として明らかに松江の人々とは壁があったが、今ではすっかり馴染んできた。カタコトの日本語でも必死に伝えようとする姿は、不器用ながらも誠実で、観ている者の心を打つ。誤解され、からかわれながらも、ヘブンは諦めずに人と向き合おうとする。そんな彼の姿に、松江の人々も少しずつ心を開き、互いの違いを受け入れていく。理解し合えないもどかしさの中にも、確かに存在するぬくもり。ヘブンを通して、また松江の人々の優しさに、人と人が分かり合おうとする力の尊さを感じさせられた。
そんな中で、錦織から何度も逃げ続けるヘブン。その裏にある事情が次回明かされていくわけだが、きっとそこには、彼が異国の地で抱えてきた孤独や痛みが隠れているのかもしれない。ここからどうトキと距離を縮めていくのかも気になるところだ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK





















