窪塚洋介が大事にする俳優としての“直感” 「“自分らしく”やるのが一番大事」

俳優、アーティストとして常に独自の道を切り開いてきた窪塚洋介が、『モンスターズクラブ』(2011年)以来、数々の作品を共に生み出してきた“盟友”豊田利晃監督の7年ぶりの長編フィクション作品『次元を超える』で、松田龍平と共にW主演を務めた。現実と非現実の境界線が曖昧になる物語の中で、窪塚は孤高の修行者・山中狼介として、観客を異世界へと誘う。そんな窪塚に、豊田監督や松田との関係性、自身のキャリアで大切にしてきたことを聞いた。
窪塚洋介と松田龍平は「水と油」のよう?
ーー『次元を超える』をご覧になって、窪塚さんはどういう感想を抱きましたか?
窪塚洋介(以下、窪塚):すべては理解しきれないですよね。現場で豊田監督に「これ、どういう解釈をしたらいいですか?」と聞いたら、「わからない」と(笑)。作った張本人がわからないんだから、やってるこっちもそりゃわからないですよね。そういう意味で、すごく余白が多い映画なんですけど、お客さんを信じているということだと思うので、逆にそれが良くて。最近の日本映画ではあまりないタイプの映画になったと思います。
ーー窪塚さんと松田龍平さんがW主演を務めることは、まだ撮影に入る前、豊田監督が脚本執筆段階の2022年12月に発表されていました。
窪塚:豊田監督から「次はSFをやりたい」とは聞いていたんですよね。シリーズもの(『狼煙が呼ぶ』(2019年)、『破壊の日』(2020年)、『全員切腹』(2021年)などの『狼蘇山』シリーズ)でもあるので基本やる前提でしたが、正式にオファーを受けて「もちろんやります」と。脚本が完成してから(松田)龍平パートの撮影に入ったんですが、一度資金面の問題で撮影が止まったんですよ。
ーーそうなんですか?
窪塚:で、空けていたスケジュールがまるっと飛んでしまって。1年後くらいに再開して、自分のパートを撮りました。2人の共演シーンも撮影が再開してから一緒に撮って。自分も長いことこの仕事をやってますが、なかなかない経験でしたね(笑)。
ーーそうなると役作りも大変ですよね。
窪塚:豊田監督はここ数年で最も一緒に作品を作っている監督なんですけど、豊田監督が自分に振ってくれる役は、現実と虚構の境目がすごく曖昧なんですよ。「あれ、俺この話豊田監督としたっけ?」とか「これ俺の言葉なんだよな」というものがセリフに混ざってくるんです。例えるなら、淡水と海水が混ざっている場所にキャラクターが立っているような状態で。
ーー言ってしまえば、ほとんど役作りがいらないということですか?
窪塚:役作りはいらないですね。パラレルワールドのもう一人の自分みたいな立ち位置でいけちゃうんです。豊田監督とは、修験道に対する知識や、大峯山に登った経験など、実際の私生活の経験が被ったりするんです。その私生活の距離感が近まっているぶん、現実と虚構の混ざり方が激しくなっているというか。
ーーじゃあ現場でお芝居について具体的に話を交わすこともあまりない?
窪塚:ほとんどないですね。演出もほとんどないですし。龍平もないって言ってました。
ーーそれほど窪塚さんと松田さんには信頼感があるということですよね。お二人がスクリーンに並んだときのカッコよさは圧倒的でした。
窪塚:(千原)ジュニアさんの異様さには敵わなかったですけどね(笑)。龍平とは『破壊の日』でも共演しましたけど、あのときは渋谷の神社の階段ですれ違うだけだったので、がっつり対峙するのは今回が初めてで。
ーー窪塚さんと松田さんはキャリアも含めて重なる部分が多いように感じますが、微妙に違う感じもありますよね。
窪塚:それは本当におっしゃる通りで。豊田監督も「2人は水と油なんだけど、似てるところもあるんだよね」と言ってました。役を生きているときの雰囲気みたいなものは似てるのかもしれないけど、アプローチが全然違ったりするので。
ーーアプローチは具体的にどう違うのでしょうか?
窪塚:龍平は、“ずっと龍平がいる”という感じです。役を自分の中に引きずり込んでいるというか……。俺の場合は、俺と役の間、つまり俺でも役でもない間に絶妙に混ざり合ったものが立ち上ってくるんですよね。この位置が微妙に違うのかもしれません。























