『ちょっとだけエスパー』宮﨑あおいに溢れる優しさと切なさ 世界を救うとは限らない第2話

大泉洋が主演を務めるドラマ『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)が放送開始から大きな反響を呼んでいる。TVerでは第1話の再生数が2日で100万回を突破。Netflixでも「今日のシリーズTOP10(日本)」で連日1位を独占している状態。大泉も自身の日記に「ドラマの評判めちゃくちゃ良かったからとても嬉しい!!沢山の感想ありがとー!!」と綴っており(※)、視聴者からの高評価が現場にも伝わる、いい雰囲気が作られていることが感じられる。
第2話で、文太(大泉洋)たちがノナマーレから指示されるミッションは「千田守が目的地に着くのを阻止する」というもの。画家の千田守(小久保寿人)が贋作師として描いたパウル・クレーの作品を芦ノ湖にいる画商に引き渡すのを防ぐ、というのがミッションの詳細な内容だ。

初回では、文太の心の声を聞く能力、桜介(ディーン・フジオカ)の花を咲かせる能力が明らかになっていたが、今回はミッションのなかで円寂(高畑淳子)、半蔵(宇野祥平)の能力が発揮される。円寂は、念じるとほんのりあったかくなるレンチン系エスパー。200W程度のため、お湯を沸かそうにも“言われればあったかい”というレベル。まさに、ちょっとだけだ。そして、半蔵は動物お願い系エスパー。ちょっとだけ動物と話せることで、千田が運転する車のフロントガラスに鳩のフンをびっしり降らせ、目的地に向かう足止めに成功した。

文太の能力は相手の目的や本心を半ば強引に読むことができ、さらに相手からのタッチでも心の声が聞こえてくることが判明。「四季ちゃんに合わせろと言っただろ、このボケナス!」という円寂の心の声に気圧される文太のシーンには、思わず声を出して笑ってしまった。今回のミッション成功の要因となったのは、犯罪者として引き返せないところへと行こうとしている千田へと寄り添う文太の姿勢と能力があったのは間違いない。一方で、分かってきたのは、桜介の能力の活躍の場が限られていること。はっきり言ってしまえば、使えないのだ。困った時の「花咲かせとく?」は一度も発揮されず、なんなら第2話で桜介は足を引っ張ってまでもいる。こんなダメダメで、チャラ男キャラのディーン・フジオカが新鮮であり、愛されキャラになっていく予感がしてならない。

さらに、四季(宮﨑あおい)は、過去に事故で旦那を亡くしていることが、円寂の口から語られる。目の前で悲惨な死に方だったため、受け入れられずに心が壊れてしまい、文太のことを本当の夫だと思い込んでいるようだ。文太だけでなく、桜介も、円寂も、半蔵も人生に失敗した人々が集まったチーム。世界を救う、とは言ったものの、これまでの人生で世界に見捨てられて生きてきた円寂は、「世界なんてどうでもいい」「でも、目の前の四季ちゃんを救うってことなら分かるじゃない」と文太に話す。

ハンドルを握ると男気溢れる性格に変わる四季の意外な一面が見られた第2話だが、その一方で円寂が話す過去も相まって、文太に寄り添う四季の姿には優しさと切なさが同居している。横領した罪を悔やみ続ける文太を慰めるように、背中に手を置く四季。その心の声は「私がいること忘れないでね」というどこまでも真っ直ぐで思いやりに満ちたものだった。

第2話のタイトルは「天使」。千田が描いたパウル・クレーの作品「忘れっぽい天使」が四季を彷彿とさせ、贋作と偽夫婦など、様々な要素がリンクしていくストーリーだ。印象的なのは千田が文太たちに話す、掴みたいのは画家としてのプライドで、絵の価値そのものだということ。藁をも掴むのではなく、掴むのが藁しかない。「そっちに行くな」と肩に置かれた天使の囁きも届くことなく、綺麗な色を重ねても、どんどん濁っていった。ついには贋作にまで手を出そうとする千田の心に届いたのが、文太の「お元気で、やりたいことやってください」という言葉だった。大涌谷で食べた黒いたまごを描きたいという画家としての意志が、千田を帰路のロープウェイへと向かわせたのだった。

しかし、千田はトラックに轢かれ、あっけなく亡くなってしまう。ラストに映し出されるのは、千田が精巧に真似た贋作の「忘れっぽい天使」。ゴッホは死後、高く評価されるようになったが、千田の絵画も後に発見され……という想像をしてしまった。いつだって称賛されるのは死後。そんな風潮を嘆くとともに、兆(岡田将生)が説明していた分岐点=「Decision Tree」、つまりはバタフライエフェクトがいつも“世界を救う”とは限らないことを示す終わり方のような気がした。
参照
※ https://www.office-cue.com/diary/contents_view.php?id=14509
■放送情報
『ちょっとだけエスパー』
テレビ朝日系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:大泉洋、宮﨑あおい、ディーン・フジオカ、宇野祥平、北村匠海、高畑淳子、岡田将生
脚本:野木亜紀子
監督:村尾嘉昭、山内大典
エグゼクティブプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、山形亮介(テレビ朝日)、和田昂士(角川大映スタジオ)
音楽:髙見優、信澤宣明
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/chottodake_esper/
公式X(旧Twitter):https://x.com/chottodakeesper
公式Instagram:https://www.instagram.com/chottodake_esper/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@chottodake_esper























