『小さい頃は、神様がいて』仲間由紀恵×北村有起哉の呼吸の良さ あんが離婚を選んだワケ

『小さい頃は、神様がいて』あん×渉の呼吸の良さ

 台風の夜を共に過ごした「たそがれステイツ」の三世帯。雨風の音に紛れながら、肩書きも年齢も違う人々がひとつ屋根の下で夜を明かした。そんな中、小倉あん(仲間由紀恵)が夫・渉(北村有起哉)に、「子どもが二十歳になったら離婚する」という19年前の約束がまだ生きていることを打ち明けたところから始まったフジテレビ木曜劇場『小さい頃は、神様がいて』第2話。

 息子の順(小瀧望)はすでに成人し、娘のゆず(近藤華)が二十歳になるまではあと54日。その夜、言い争いになりかけた二人は、寝ているゆずに気づかれぬよう家を抜け出し、夜の街を走る。彼らの乗る車の中で流れる松任谷由実の「リフレインが叫んでる」。そのメロディーが、すれ違い続けた夫婦の時間をそっと照らしているようで切ない。

 車を停めたのは、いつも通っている洗車場。あんと渉は、車を洗いながら本音をぶつけ合う。「離婚したらどうするの?」「子どもは?」。言葉のキャッチボールは、まるで漫才のようでもあり、長年連れ添った二人の呼吸の良さを感じさせる。仲間由紀恵のキレのあるテンポと、北村有起哉の飄々とした受け方が絶妙にかみ合い、緊張と笑いが交互に押し寄せる。だが、あんにとってこの“約束”は19年前から心の中で決まっていたこと。彼女は一度も忘れたことがなかった。

 一方その頃、二階の奈央(小野花梨)と志保(石井杏奈)は、眠れぬ夜に散歩へ出かけていた。通りかかったリサイクルショップで、二人は一台のキッチンカーに目を奪われる。お店を出す夢を語り合ってきた二人にとって、まるで運命の出会いのような瞬間だった。だが、掲げられた値札は手が届かない金額。希望と現実のあいだに立ち尽くす二人の姿が、あんと渉の“届かない夫婦の距離”と重なって見える。

 翌日、ゆずが外出することを知った渉は、あんと二人きりになることを避けようとする。職場でも会長に夫婦の関係をからかわれ、心ここにあらずの渉は、ついに1階の慎一(草刈正雄)に助けを求める。慎一は事情を深く詮索せず、いつもの調子で受け止めるが、その背中にはどこか優しさがある。こうして再び「たそがれステイツ」の住人たちが集う夜が訪れた。今度の会場は永島家。しかし、あんは、渉が慎一に頼み込んで開いた集まりだとすぐに察する。

 テーブルを囲む穏やかな空気の中で、さとこ(阿川佐和子)はふと真顔になり、「するの? 離婚」とあんに問うと、あんは一拍の間もなく「はい」と答える。その瞬間、周囲の空気が少しだけ止まり、慎一が気まずそうに笑う。その瞬間の静けさと、それを見つめる住人たちの空気が、このドラマの妙味だ。深刻な話題のはずなのに、そこには笑いと優しさが共存している。

 この離婚の話は、子どもたちには秘密のはずだった。だが、ゆずは階段の陰でそっと聞いてしまう。ショックを受けた彼女は兄・順に相談するが、順はずっと前から母の心を察していたのだ。母を気にかけ、さりげなく支えてきたのは、あの約束を覚えていたからだったのだろう。

 「なんで私は自分を我慢しなきゃいけないのか」。あんの心にあるのは、母として、妻として、“役割”に縛られてきた年月への小さな痛みだ。子どもたちはかわいい。けれど、彼女は「母」としてだけ生きてきたわけではない。自分を後回しにしてきた人生の中で、ようやく立ち止まり、見つめ直そうとしている。人生は、決して神様が仕組んだ筋書き通りにはいかない。けれど、そんな不完全さの中にこそ、人が人を思う小さな奇跡がある。

『小さい頃は、神様がいて』の画像

小さい頃は、神様がいて

岡田惠和が完全オリジナル脚本を手がけるホームコメディー。3階建てのレトロマンションに住む、3家族の住人たちの物語が紡がれる。

■放送情報
『小さい頃は、神様がいて』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:北村有起哉、小野花梨、石井杏奈、小瀧望、近藤華、阿川佐和子、草刈正雄、仲間由紀恵
脚本:岡田惠和
主題歌:松任谷由実「天までとどけ」(ユニバーサル ミュージック)
音楽:フジモトヨシタカ
演出:酒井麻衣
プロデュース:田淵麻子
制作プロデュース:熊谷理恵、渡邉美咲
制作協力:大映テレビ
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/chiikami2025/
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