『フェイクマミー』が2025年に放送される大きな意義 TBSドラマは“働く女性”の代弁者に

「このドラマは、社会の潮流を変えてくれるのではないか」――10月10日から始まったドラマ『フェイクマミー』(TBS系)の第1話は、観終わった後にそんな期待をしてしまった作品であった。
本作は、正反対の人生を歩んできた2人の女性が、子どもの未来のために“母親のなりすまし”という禁断の契約を結ぶといった内容。金曜22時の枠ともあって、社会に訴えてくるメッセージ性がある一方、重めのテーマなのかと想像していたが、いざ蓋を開けると非常に爽やかに、しかし私たちが日々感じているモヤモヤに寄り添うような内容だという印象を受けた。
波瑠演じる花村薫は、東京大学を卒業し、大手企業に就職。そこでダイバーシティを推進し、順風満帆なエリート街道を歩んでいたものの、とある理由で退職し、転職活動に苦戦しているという役どころだ。
この、とある理由というのが、昨今、世の中に広まりつつある“多様性”や“誰もが働きやすい会社に”といったメッセージの裏側にいる社員たちの疑問だ。

薫はダイバーシティを推進し、優秀社員賞に選ばれるような絵に描いたような順風満帆な会社員生活を送っていたのだが、独身で子どもがいないというだけの理由で、会社では“バリキャリ女子”のようなレッテルを貼られる。しかも、子育て中で時短勤務の同僚が“お母さんも働きやすい会社”という看板を背負うため、その補佐に命じられるという展開に。そのときに薫は「誰かを押し上げるために別の誰かを犠牲にするような多様性」を受け入れることができず、辞表を提出するのであった。
もちろん、社会としては子育てをしながら活躍する人材を大切にしたいし、実際に子育てを理由にキャリアを、キャリアを理由に子育てを諦めるというのは、今の時代ナンセンスだとも言える。だからこそ、「多様性だ」「ダイバーシティだ」と声高に叫ばれているわけなのだが、そのときに独身だったり、DINKSだったりの社員の負担から目を逸らしてはいないか、と疑うことが度々ある。「みんなが働きやすい社会」の「みんな」とは、「本当に“みんな”を指しているのだろうか?」と。

考えてみれば、ここ数年、TBSドラマでは“働く女性”にフォーカスを当ててきたものが多く世に放たれた。





















