『ばけばけ』髙石あかり中心に松野家の“コメディ力”が高過ぎる トキの出生にも秘密が?

いよいよ始まったトキ(髙石あかり)のお見合い。NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第8話は、ユーモアも交えつつも、時代に適応できているかに阻まれる切ない展開となった。
明治時代のお見合いは家と家のやりとりで、部屋の中には、仲人、父親、婿候補と男性ばかり。見合いの張本人であるはずのトキもお茶を出すだけで、婿候補である中村守道(酒井大成)と言葉を交わすこともできない。そんな現代から見ると違和感のあるお見合いの光景を、ナレーション役である阿佐ヶ谷姉妹が実況中継さながらに説明してくれる。蛇(渡辺江里子)と蛙(木村美穂)の掛け合いは、台本の存在を疑ってしまうほど自然だ。ナレーション役を2人、しかも芸人に任せるというのは、一種の発明なのかもしれない。

そんなナレーションにも見守られて、目を合わせたトキと中村。2人とも心の中で互いを品定めし、互いに悪くないという評価を下す。トキの脳内では、中村としじみ汁を飲む妄想が始まる。借金を返すために結婚というマイナスをゼロにする未来予想を持っていたトキが、はじめてプラスの未来を予想した瞬間だろう。
目を合わせた2人を見た瞬間、司之介(岡部たかし)と勘右衛門(小日向文世)が口を挟む。第7話では髷を褒められて調子に乗っていた2人。考えていることを口に出したくて仕方がない、素直すぎる親子なのだろう。「ようやった! おトキ!」「お嬢! 日本一じゃ!」とテンポの良すぎる掛け声に、「これはお見合いなのか?」と笑いそうになってしまった。岡部も小日向もユーモアからシリアスまで華麗に演じられる名バイプレイヤーだが、コメディシーンの相性の良さに毎話感服させられる。無事、お茶を運び終えたトキは、解放されたかのように笑顔で床をゴロゴロ。3人は結果的に似たモノ親子なのかもしれない。

お見合いを終えた夜、感慨にふけり、穏やかな空気に包まれる松野家。しかし、見合いの結果は芳しくなく、中村家から断りを入れられてしまう。理由は、トキではない。司之介と勘右衛門の存在だ。司之介と勘右衛門が見た目でもわかるとおり、時代の変化に背中を向け、自身の誇りを守っていることが原因だった。これまで、言葉で司之介と勘右衛門を責めることはなかったトキ。脳内で妄想を繰り広げるほど希望を見た相手との未来が、親と祖父の武士の意地に阻まれてしまったことは、彼女にとって大きな無力感を感じる出来事だったのだろう。

別日に、雨清水家へ詫びを入れにいく松野家一同。傳(堤真一)は、武士らしさのようなものが破談に繋がったことを自覚するべきだとたしなめる。そして、タエ(北川景子)は、トキにだけ話があると、呼び止める。何の話をするのか気になる司之介や勘右衛門と察しの悪い傳の、「その」と「あの」が繰り返される雲を掴むようなやり取りをぽかんと眺めるトキ。トキの出生に何かしら秘密がありそうではあるが、松野家と雨清水家の間にある秘密にまつわるやりとりが、コメディシーンとして昇華されていた。どの出演者もコメディ適性が高く、どの場面でもユーモアに寄せることも、切なさに寄せることもできるのが、本作の強みだろう。
緊張感に包まれたはじめてのお見合い、断りを入れられてしまった無念。ままならないことばかりな日常に存在するフッと笑ってしまうやりとりこそが、『ばけばけ』が見せたいものなのかもしれない。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK





















